2017年8月18日、ジャスダックに上場している「光彩工芸」が、本社経理部門社員の男性責任者が、会社の預金口座から現金を着服していたことを発表した。
被害総額は、なんと約2億3000万円に及んだことが分かったという。
着服の経緯と手口
光彩工芸の経理責任者は、2014年(平成26年)頃から2017年7月の約3年半にわたり、会社の預金口座から現金を着服していた。
架空経費の水増しによる経理操作でねん出するなどの方法で、1回数十万円から数百万円を数十回にわたって引き出していたようだ。
着服の発覚
東京国税局が7月下旬に行った上場企業の定期検査で発覚したようだ。
着服金の行方
着服した金は、経理責任者が個人で設立した会社の運用資産の土地や建物を購入するために使われたという。
なお、これらの土地や建物を売却すれば、着服金の回収は可能だとみられている。
刑事告訴
会社は、着服金の回収状況なども鑑みて、刑事告訴するか判断するようだ。
光彩工芸とは
本社を山梨県甲斐市竜地に置く、ジュエリー製造販売の会社。
1955年に創業し、1995年にジャスダックに上場した。
2017年1月期の売上高は19億7900万円。
国税局の指摘で発覚
経理担当による着服事件がまた発生した。
今回の着服事件は、国税局の指摘により発覚した。
一般に、国税局の定期検査は嫌がる企業が多いが、着服や横領などが発覚するという会社にとってプラスの面もある。
それにしても、外部の調査で発覚するとは、杜撰な経営だと思われても仕方がないだろう。
刑事告訴しない可能性?
これは少し信じられないのだが、会社は、着服金が回収できれば、経理責任者を刑事告訴しないかもしれないようだ。
かなり甘い対応と言わざるを得ない。こういう対応を取る会社が多くなれば、着服・横領という「おいしい」行為は増えるのではないか。
会社の対応としては、責任追及というよりも、資金回収に重点を置いているようだ。
確かに起こってしまったことは仕方のないことで、損失を回復することを重視するのは大切だが、不正行為を行った者の責任を追及しない、というのは、会社の姿勢としてどうか、とも思う。
上場企業としてのスタンスとしても、どうだろうか。
逸失利益はどうか
また、会社側は着服金の回収状況を見る、としているが、それは着服金で得られた利益も含んでいるのだろうか。
この経理責任者は、資産運用目的で会社の金を着服したようだが、仮に、この経理責任者が着服した金を元手に1億円の利益を得ていたとしよう。
会社が着服された2億3000万円が回収できれば良いと考えているならば、経理責任者は、着服金を返還したとしても、1億円の利益を得られたということになる。
これはおかしな話だ。
逆に言えば、会社は、着服された2億3000万円があれば得られたであろう利益を失っていることにもなる。「逸失利益」である。
経理責任者は会社をクビになるだろうが、そんなことは大した問題ではないだろう。個人で会社も持っているようだし、着服金を運用した利益があるのかもしれないのだから。