「人口オーナス」とは、生産年齢人口の人口構成に占める割合が低下する現象で、こういった現象が経済や社会に対して重荷となっている状態を指す。
平たく言えば、少子高齢化によって国民に対する経済的・社会的な負担が増えている状態だ。
「オーナス」は、英語で「負担」などを意味する onus に由来する。ボーナス(bonus)の対義語だ。だから、人口オーナスの対義語として「人口ボーナス」という用語も存在する。
生産年齢人口は、15歳から64歳であるとされる。つまり、子供や高齢者など働いていない人の割合が、こういった人たちを支える労働者に対して大きい状態である。
まさに、日本はこの「人口オーナス」の状態である。
人口オーナス・人口ボーナスを英語で何という?
「人口ボーナス」あるいは「人口オーナス」という言葉は、上記のように「ボーナス(bonus)」や「オーナス(onus)」という英語を使っている。
しかし、英語で「人口ボーナス」や「人口オーナス」のことを指す場合、どうやらこれらの bonus やら onus を使うわけではないようだ。
「人口ボーナス」のことを英語で demographic dividend という。
demographic というのは「人口統計学の」とか「人口統計上の」という意味。また、dividend というのは「利益」とか「恩恵」と言う意味だ。投資の世界では、dividend というと「配当」を意味する。
で、「人口ボーナス」の対義語である「人口オーナス」のことは、英語で demographic tax だとか demographic burden というようだ。
人口オーナスの中で経済成長するためには
少子高齢化で見られる人口オーナスの中でも経済成長を維持するためには、生産年齢人口の生産性を上げるということが考えられる。この生産性のことを「生産年齢人口1人当たりの生産性(生産年齢人口生産性)」というようだ。
つまり、生産年齢人口生産性を上げることにより、生産年齢人口の減少分をチャラにできるということである。
日経新聞(2018年1月27日付)によると、2012年と2017年を比較した場合、生産年齢人口は5.3%を下落したが、実質GDPは7%増えたという。その要因として、生産年齢人口生産性が13%も上昇したことが挙げられている。
生産年齢人口が減少しても、生産性を上げることにより、成長を持続させたということだ。
生産年齢人口生産性を上げるための2つの方法
生産年齢人口生産性を上げるためには、以下の2つの方法が考えられるという。
・「生産年齢人口との対比でみた労働力人口の比率(労働力率)」を上げる。
・「労働力人口一人当たりの生産性(労働力生産性)」を上げる。
前者においては、例えばこれまで働いていなかった女性や高齢者が働くことにより達成される。また、後者については、働く人がより効率的に働き生産性が上がることで達成される。
上記の2012年と2017年を比較した生産年齢人口生産性の上昇は、主に前者の方法によって達成されたという。
というのも、女性や高齢者の参入によって労働力率は8.4%上昇したものの、労働力生産性の上昇は4.1%の上昇に止まったからだ。
女性と高齢者の労働力にも限界が
近年、女性の労働推進や高齢者の雇用を上げようと世論の高まりがあった。
共働きを是とし、シルバー人材の有用性を謳うマスコミと、それに操られるかのように世相が変わっていくのを奇妙に感じていたが、人口オーナス下において経済成長を維持しようとする官民一体となった努力があったわけだ。
その背景には「労働力率」を上げるという目的があったわけである。
ただ、やはり女性や高齢者の「動員令」にも限界が訪れるのは間違いない。
となると、今後は「労働力生産性」の上昇を達成せねばならないだろう。
最近「働き方改革」がやたら政府声明やマスコミを賑わせているのも、こういう事情があるからである。