有毒植物を食べて食中毒になる事例は多いが、毎年のように報道されるのが「イヌサフラン」を「ギョウジャニンニク」と間違えて誤食するケースだ。
なぜ「イヌサフラン」と「ギョウジャニンニク」を間違えてしまうのだろうか。
それぞれ見ていこう。
「イヌサフラン」とは?毒性は?
「イヌサフラン」は、ヨーロッパ原産のユリ科の多年草である。「犬サフラン」と表記することもある。
学名は Colchicum autumnale で、英語表記は colchicum。
コルヒチン(colchicine, C22H25NO6)と呼ばれる毒性の強い物質を葉、種子、鱗茎などに含む。
このコルヒチンは、アルカロイドの一種で、痛風などの治療薬として使われる。
ただ、毒性が強く、過剰摂取すると、下痢、嘔吐、腹痛、肝障害、呼吸不全などを引き起こすのだ。
「ギョウジャニンニク」とは?
「ギョウジャニンニク」は、ユリ科もしくはネギ属の多年草。「行者忍辱」、「行者大蒜」と表記することもある。学名は Allium victorialis で、英語では longrooted onion。
ニラやニンニクに似た強い臭気を放つ。
食用ではあるものの、イヌサフランを始め、スズランなどの毒草と間違えやすいために注意が必要である。
写真を見ても分かるように、「イヌサフラン」とほとんど見分けがつかないほど似ている。
「イヌサフラン」と「ギョウジャニンニク」をどのように見分けるか
北海道の上川総合振興局のサイトによると、「ギョウジャニンニク」の場合は、低地の林内の日当たりのよい傾斜地に生えるという。
また、「ギョウジャニンニク」には強烈なニンニク臭があり、茎は赤紫色を帯びるという。このあたりが見分けるポイントだろうか。
ただ、野生の植物などを日頃から食しているような経験豊富な年配の方まで誤食してしまう例もあることから、できれば「ギョウジャニンニク」だと思っても食さない方が賢明だと思われる。
「ギョウジャニンニク」が食用であるのは事実だが、「イヌサフラン」と間違える可能性が高いこと、そして「イヌサフラン」を食すれば、下手をすれば死んでしまうこともあることを覚えておきたい。
群馬県は、食用だと確信が持てない植物については「採らない、食べない、売らない、人にあげない」ということを呼び掛けている。
また、これに加えて、たとえもらったとしても、食さないようにしよう。
「イヌサフラン」で食中毒に陥った事例
それでは、「イヌサフラン」で食中毒が起こった事例をいくつかご紹介しよう。
2019年 群馬県渋川市の事例
2019年4月20日、群馬県渋川市の70代の夫婦が、「イヌサフラン」を「ギョウジャニンニク」と間違えて食べた。同日夕方ごろ、嘔吐、下痢、呼吸困難などを訴え、病院へ搬送された。
妻は軽症だが夫は意識不明の重体。
2017年 北海道富良野地方の事例
・2017年5月11日、富良野地方に住む80代と70代の家族3人が有毒な「イヌサフラン」を食べ、食中毒を起こした。
これにより、80代の女性が死亡した。
詳細は以下の記事を参照。
https://ryoukou-hibi.com/health/image-colchicum-caution-2017-05-15/
2007年新潟県、2014年静岡県の事例
2007年4月には新潟県の男性が、2014年9月には静岡県の男性が、ギョウジャニンニクと間違えて摂食して、いずれも死亡。