
2017年8月2日付の英科学誌『ネイチャー(Nature)』電子版に、アメリカの大学チームが心臓病の原因となる遺伝子変異を「ゲノム編集」技術を使って高い確率で修復することに成功したと発表した。
今回論文を発表したのは、米オレゴン健康科学大学(Oregon Health and Science University)などのチーム。
同チームは、ゲノム編集技術である「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)」を使用。肥大型心筋症の原因となる遺伝子変異を持つ精子と、ゲノム編集のための試薬を同時に正常な卵子に注入したという。
そして、体外受精でできた58個の受精卵のうち、42個が正常な遺伝子だけを持っていたという。全体の約72%に遺伝子変異が起きなかったことになる。
なお、今回の実験で修復に成功した胚は数日間のみ発育され、子宮に移すことは避けられたという。
カンタはこう思う
肥大性心筋症は遺伝性の難病。
今回の実験の結果は、肥大型心筋症を持つ子供を減らすことにつながる技術革新につながる一方、倫理的な観点から批判もあるようだ。難しい問題である。
ちなみに、両親のうち片方のみに遺伝子変異がある場合、自然妊娠で受精卵にその変異が受け継がれない確率は50%であるという。
つまり、自然な妊娠であれば50%の確率で子供に遺伝子変異が受け継がれるが、今回の技術を使えば、その確率を28%まで減らせるということになる。
半分の確率が4分の1程度にまで減らせるとなれば、確かに印象は異なる。
なお、一応、元のソースとなる『Nature』誌の論文をざっと読んでみたけれど、読むのはちょっと骨が折れるので、結局新聞記事を参考にさせてもらった。
自信のある方は、読んでみてはどうだろう。⇒Correction of a pathogenic gene mutation in human embryos
なお、ゲノム編集に関する本は多く出ているが、私のような門外漢が最初から学ぶには以下の本がおすすめ。
同書は「科学ジャーナリスト賞2017」を受賞している。
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-参考資料-
・『人の受精卵をゲノム編集 心臓病の遺伝子修復に成功 米チーム』、産経ニュース、2017年8月3日、http://www.sankei.com/life/news/170803/lif1708030004-n1.html・『ヒト受精卵「編集」で疾病遺伝子を修復 米チームが初成功』、AFP、2017年8月3日、http://www.afpbb.com/articles/-/3137938?cx_part=topstory
