「碍(石へんに得の右側)」って、何て読むか分かりますか。
少し違いますが、石へんに「日」と「寸」とも読めますね。
「碍子」や「障碍者」などで使われる漢字です。
字面だけを見ても、正しい読みや意味にたどり着くのはなかなか難しいと思います。
現在はなかなか見かけることはありませんが、将来的によく目にする漢字になるかもしれません。
以下、そんな「碍」という漢字についてまとめました。
「碍」の読み方と意味
「碍」は、音読みで「ガイ」もしくは「ゲ」と読みます。
訓読みは、「さまた(げる)」です。進行をさまたげる、さえぎる、などの意味があります。
本字は、「礙(がい)」です。
あまり見かけることがない漢字だと思いますが、以下のように使われています。
「碍子」の読み方と意味
「碍子」は「がいし」と読みます。
「碍子」とは、電線を絶縁し、支持するための器具です。
電柱の電線を支える部分に、丸いものがいくつか並んでいるのを見たことがありませんか。
下の写真を見てください。
これが「碍子」です。
この碍子により、電柱へ電気が流れないように絶縁しているのです。
「阻碍」の読み方と意味
「阻碍」は「そがい」と読みます。
一般には、「阻害」と書かれます。「邪魔をすること」や「阻むこと」を意味します。
「無碍」の読み方と意味
「無碍」は「むげ」と読みます。
「無碍」は、「邪魔がなく自由自在なこと」や、「障害がないこと」を意味します。「融通無碍」などで使われます。
「融通無碍」とは、手元の広辞苑によると、「一定の考え方にとらわれることなく、どんな事態にもとどこおりなく対応できること」と書かれています。
他には、「自由無碍」とか「無碍光」という表現でも使われますね。
「むげに断る」を漢字で書くと「無碍に断る」?
「むげに断る」という表現について「無碍」を使い、「無碍に断る」と書く例を見かけます。
実は、「無碍に断る」と書くのは正しくないようです。
では、「むげに断る」の「むげ」は漢字でどのように書くのかご存知ですか。
正解は以下の記事で詳しく説明しておりますので、ご覧ください。
⇒「むげに断る」の意味とは 「むげ」は漢字でどう書く?「無碍」?
「障害者」と「障碍者」の表記問題
現在、障害者について、「障碍者」と書けるように、「碍」を常用漢字にしてほしい、という声が多いそうです。
というのも、現在は、「障害者」のように「害」という漢字が使われていますが、この漢字には負の印象が強いと感じる、ということです。
また、「障がい」と書いて、「害」という漢字の使用を回避する自治体も増えてきているとか。ひらがなを使うのは、「碍」という字が常用漢字ではなく、あまり使われないことに配慮しているのでしょう。
例えば、障碍者向けに就職や転職をサポートするサービスもありますが、そういったサービスでは「障がい」という表記を使っています。
障がい者の方自身、自分のことについて「障害者」という、あたかも「世の害」であるかのような漢字が使用されることに不快感を持つことがあるそうです。
確かに、「害」という字には、結構強いイメージがあり、「害虫」等のように、マイナスで使用されることが多いのです。障害者に使用することに抵抗を覚える人がいるのにもうなずけます。
そもそも、「障害者」という強い言葉ではなく、もっと柔らかいニュアンスの言葉を使用するのが良いのかもしれませんね。
もし「障害者」から「障碍者」に表記が変わると、近い将来、「碍」も良く見かける漢字になるかもしれません。
しかし、後述するように、2021年、文化審議会の国語分科会は、「碍」を常用漢字へ追加することについて見送る方針を固めたようです。
「碍」の常用漢字への追加 見送りへ
2021年2月の報道によると、文化審議会の国語分科会は、「碍」の常用漢字追加について、見送る見解をまとめたようです。
常用漢字とは、公文書や、新聞など日常的に使用される漢字のことです。
この常用漢字への「碍」の追加を検討することが先日決議され、今回の検討は、その決議を受けたものだったのです。
今回、「碍」を常用漢字へ追加することが見送られた理由としては、この「碍」の使用頻度がまだそれほど高くない、ということだということです。
ただ、この理由に関しては、常用漢字にしていないから使用頻度が高くない、ということもいえるので、なんとなく「ニワトリと卵」の話になってしまうような気がします。
なお、上述のように、「害」という字に否定的な意味合いがあるという意見に対しては、「碍」という漢字自体についても、かつてはいい意味ではなかった、という見解も出されたようです。
確かに、「碍」の現在における意味自体においてさえも、「さまたげる」というものなので、「害」を「碍」に代えたところで、ネガティブな本質は変わらないのかもしれません。
そのうえで、「障害者」という表現については、新たな用語を検討する必要性について議論されたということです。いっそのこと、用語自体を変えるということですね。
「碍」の見送りについては、2021年3月に開かれる国語分科会で正式に決定される模様ですが、「障害者」の表記については、意識調査などを行い、引き続き議論されるようです。
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-参考資料-
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編、『漢検 漢字辞典 第二版』、2017年3月30日・『「障害」の「害」を「碍」と表記 常用漢字追加見送りへ』、NHKニュース、2021年2月28日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210228/k10012889591000.html?utm_int=all_side_ranking-social_004