以前の記事でも紹介したが、オランダの不妊治療クリニックの院長が、患者に無断で自分の精子を使っていたという事件があった。
不妊治療クリニックの院長であるヤン・カールバートが、体外受精に自分の精子を使っていたというものだ。
院長はすでに死亡しているが、生まれてきた子供たち容姿などが、成長するにしたがってカールバートに似てきたため、不審に思った親や子供たちがDNA鑑定を求める訴訟を起こしたのである。
先日、そのDNA鑑定の結果が判明した。
結果としては、49人の子供について、カールバートとの親子関係が認められたという。
とんでもない事件である。
上述の記事でも書いたが、ある意味集団レイプに近い。
相手の肉体を傷つけてはおらず、性的な暴行は行っていないものの、相手に無断で自分の遺伝子を強引に相手女性に植え付けたわけだから。生まれてきた子供たちの精神的苦痛もあるだろう。
気の毒な話であるが、この世紀の悪行を行った医師は、もうこの世にいない。89歳の天寿を全うしたのだ。
性欲というのは、人間の欲の中でも強いものだと思うが、その性欲の根源にあるのは、自分の遺伝子を残すという目的である。
カールバートは、性交という手段を排除して、自分の遺伝子を残すという目的を達成した。
しかも、49人に遺伝子を残すというのは、昔の王侯貴族でしかなしえなかったであろうほどの規模である。歴史的には、莫大な富や権力、優れた体力や頭脳を持つものが、優秀な遺伝子を残すために(ある意味)許されてきた行為である。
それが、何の変哲もない一介のクリニック院長が何のリスクを負うこともなく、49人分もの遺伝子を残すことができたのだ。しかも、養育費などの負担を負うこともなく、むしろ謝礼が得られたわけである。
法的にはどのようになるのか分からないが、倫理的には到底許されるものではない。
なお、カールバートは、他にも自分の遺伝子を使った可能性があり、被害者の数は49人以上に増える可能性もある。