2020年7月28日、タイヤメーカーの「住友ゴム工業」の子会社「住ゴム産業」の社員が、「架空取引」を行ったとして逮捕された。
さて、この「架空取引」とは一体何なのだろうか。
どのようなやり方で、何を目的とした犯罪なのだろうか。
「架空取引」・「循環取引」とは
「架空取引」とは、その名が示すように、「架空の取引」、つまり「実体がないのに、さも取引を行ったように見せかけるもの」という意味だ。
なぜこんなことを行うのかというと、架空取引を行うことにより、不正に売り上げを計上することができ、それにより資金繰りで有利になるからである。
つまり、架空の取引を行ったように見せかけると、それだけ売上高が上がる。すると、会社の売上高が上がって好調であるように見せることができ、融資などを受けやすくできる。売上高を意図的に操作するということだ。
また、なぜ「循環取引」と言うのか、というと、例えばA社の商品をB社が買い取った、という架空の取引を行い、これをB社からC社に書類上だけで売買され、最終的にA社の在庫に戻る、という形にするからである。つまり、商品が、架空の取引を通じて「循環」するわけだ。
架空の取引を伴う循環取引は、会社の売上高を不法に上げ、粉飾決算に繋がるものである。
「架空取引」・「循環取引」の事例と手口
それでは、架空取引および循環取引の実際にあった事例や手口を見ていこう。
「住友ゴム工業」の子会社「住ゴム産業」元社員の事例
2020年7月28日に報道された事件では、大手タイヤメーカーである「住友ゴム工業」の子会社である「住ゴム産業」の元社員が、架空の取引を繰り返す循環取引を行ったとして逮捕された。
この元社員は、平成27年に、斜面の崩落防止などに使うゴム製品を宮城県の建築資材販売会社から仕入れ、それを都内の土木工事の設計会社に販売するという架空の取引を行ったそうだ。
この元社員は、会社に約9000万円の損害を与えたということで、背任の容疑があるという。
なぜ元社員がこんな犯罪に手を染めたのか、というともちろん「おいしい思い」ができるからだ。
この元社員は、架空取引の一部をキックバックする手口で、合わせて数千万円を不正に着服していた疑いがあるという。
不正に気付いた会社は、この元社員を懲戒解雇にした上、警察に刑事告訴した。
元社員は、「生活費や遊ぶ金がほしくて、始めたらやめられなくなった」と容疑を認めているという。