獣偏(けものへん)に交わると書いて、「狡」という漢字があります。
例えば、「狡猾」といった言葉で使われます。
今回は、漢字「狡」について説明します。
「狡」の読み方 音読み・訓読み
「狡」の音読みは「コウ」です。
また、「狡」の訓読みは「ずる(い)」「こす(い)」「わるがしこ(い)」「くる(う)」です。
「狡」の意味
「狡」には、「ずるい」とか「わるがしこい」という意味があります。
また、「狡」には「すばやい」という意味もあります。
「狡猾」とは 読み方と意味
「狡猾」は「こうかつ」と読みます。
「狡猾」の意味は、「ずる賢いさま」とか「悪知恵が働くさま」といったもので、例えば「狡猾な手口」という風に使われます。
なお、「狡猾」は「狡黠」と書かれることもあります。「猾」も「黠」も「悪賢い」という意味を持つ漢字です。
また、「狡猾」の類義語に「狡獪(こうかい)」があります。
「狡知」とは 読み方と意味
「狡知」は「こうち」と読みます。
「狡知」とは、「悪知恵」とか「ずる賢い知恵」という意味です。
例えば、「狡知に長ける」という風に使います。
「狡智」と書かれることもあります。
類義語に、「奸知(かんち)」があります。
「狡兎三窟」とは 読み方と意味
「狡兎三窟」は「こうとさんくつ」と読みます。
「狡兎三窟」とは、「災難を逃れることが巧みなたとえ」です。
「狡兎」とは、「すばしこいウサギ」という意味です。
すばしこいウサギは、3つの隠れ穴(三窟)を持っていて、危険が迫るとそのいずれかの穴に逃げ込んで難を逃れる、ということから、「狡兎三窟」という四字熟語ができました。
ずる賢い人間は用心深いので、困難から逃れる手段を抜かりなく用意しているものなのです。
「狡兎死して良狗烹らる」とは 読み方と意味
「狡兎死して良狗烹らる」は、「こうとししてりょうくにらる」です。
「狡兎死して良狗烹らる」の意味は、「役に立つ間は大切にされるが、必要なくなると捨てられてしまう」というものです。
「狡兎」は、上述のように「すばやいウサギ」という意味で、「良狗」は「良い犬」という意味です。
つまり、「獲物であるすばやいウサギがいなくなると、猟犬も不要になって煮て食べられてしまう」という表現ですね。
『項羽と劉邦』において、劉邦は、韓信という天才的な軍事能力を持つ家臣の働きによって、宿敵の項羽を破り、漢王朝を築くことができました。
しかし、中国を統一し、高祖となった劉邦にとって、韓信という軍事の天才の存在が疎ましくなりました。そして、ついに韓信を殺害してしまうのです。
韓信は、その死ぬ間際に、「狡兎死して良狗烹らる」と述べたということです。
なお、軍事の天才の韓信に対し、謀の天才であり漢の統一に貢献した張良は、劉邦の変心を予見し、中国統一後は素早く身を退いたということです。功にしがみつくと、碌な結果にならないことを知っていたのでしょう。
なお、「狡兎死して良狗烹らる」は「狡兎死して走狗烹らる」とも言います。
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-参考資料-
・『DK漢字辞典』・公益財団法人日本漢字能力検定協会編、『漢検 漢字辞典 第二版』
・阿辻哲次、他、『角川 現代漢字語辞典』、2001年1月31日
・藤堂明保、他偏、『漢字源 改訂第六版』、2018年