人偏(にんべん)に「替える」の「替」を組み合わせると、「僭」という漢字になる。
この漢字をご存じだろうか。
今回は「僭」という難読漢字についてご紹介しよう。
「僭」の音読みと訓読み
「僭」の音読みは「セン」である。
また、訓読みは「おご(る)」、「なぞら(える)」である。
「僭」の意味
「僭」は、「おごる」とか「まねる」、「なぞらえる」という意味である。
特に「身分不相応におごり高ぶる」という意味である。
それでは、「僭」を使った言葉を見ていこう。
「僭越」とは 読み方と意味
「僭越」は「センエツ」と読む。
「身分や分限をわきまえず、出過ぎること」を意味する。
よく「センエツながら…」という枕詞を聞くことがあるだろう。これを漢字で書くと、「僭越ながら…」となるわけだ。
また、生意気な態度などを指して、「僭越な態度」ということもあるし、出過ぎた言葉を指して、「僭越な言葉」と言うこともある。
「僭称」とは 読み方と意味
「僭称」は「センショウ」と読む。
「身分不相応な称号を名乗ること」とか、「その身分に相応しくない称号」の意味。
「王を僭称する」という形で使われる。
中国を統一した始皇帝が築いた秦の末期、圧政に苦しんだ民衆の蜂起が各地で起こった。
その中で特に陳勝と呉広によって起こされた反乱を「陳勝呉広の乱」と呼ぶことがある。
さて、その陳勝と呉広だが、最盛期には「張楚(ちょうそ)」という国を興し、王を「僭称」することになる。
しかし、急造の農民兵団が秦の精鋭軍団に勝てるはずもなく、また内部での混乱もあり、次第に鎮圧されていくことになるのである。
陳勝と呉広による反乱は、秦を倒すまでには至らなかったが、その後の項羽と劉邦による秦の打倒に繋がるものであった。
ちなみに、陳勝は、「燕雀安知鴻鵠之志哉(燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや)」とか「王侯将相寧有種也(王侯将相いずくんぞ種あらんや)」という名言を残している。
これらのエピソードは、日本では小説の『項羽と劉邦』という作品に描かれている。とても面白いので、ぜひご一読を。
司馬遼太郎『項羽と劉邦』
また、読みやすい漫画版もある。『三国志』でおなじみの横山光輝が描いた。
横山光輝『項羽と劉邦全12巻箱入 (潮漫画文庫)』
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-参考資料-
・『DK漢字辞典』・公益財団法人日本漢字能力検定協会編、『漢検 漢字辞典 第二版』
・阿辻哲次、他、『角川 現代漢字語辞典』、2001年1月31日
・藤堂明保、他偏、『漢字源 改訂第六版』、2018年