「ならう」というと、一般的に「習う」という風に書く。
しかし、「習う」の他に「倣う」という書き方があるのをご存じだろうか。
実は、日本語の「ならう」には主に2つの意味合いがあり、漢字の「習う」と「倣う」はそれぞれの意味合いに沿って使われるのである。
それでは、「習う」と「倣う」はどのように使い分ければよいのだろうか。
日本語における「ならう」 2つの意味
日本語の「ならう」には、主に2つの意味があるようだ。
1つは「教えてもらう」ということ。そして、もう一つは、「真似をする」ということ。
そして、「教えてもらう」という意味に対しては「習う」を使い、「真似をする」という意味に対しては「倣う」を使う、という風に使い分けするというのが基本だ。
基本的な違いが分かったところで、それぞれの使い方について詳しく見ていこう。
「習う」の意味と使い方
上にも述べたように、「習う」は、基本的に「教えてもらう」という意味合いで使われる。
それでは、教えてもらって習う場合、皆さんはどのように学ぶのだろうか。
そう、習ったことを繰り返して身につける、というのが一般的である。
「習う」には、「何度も繰り返して練習して身につける」という意味があるのである。
「習う」の「習」は、部首が「羽」であるが、なぜかというと、鳥のヒナが繰り返し飛ぶ練習をしているさまを表しているからだという。
なるほど、確かに「習」が使われる言葉には、「練習」・「学習」・「復習」など、繰り返し練習をすることを連想させるようなものがいっぱいある。
他に「習」という漢字が使われる言葉に「教習」や「講習」などもある。これらの言葉が使われると、先生や講師という立場の人がいることが暗に示され、「その先生や講師に教えてもらう」ということを我々は何となく理解するのである。「習」の「教えてもらう」という基本的な意味合いが、このような言葉の背景にあるのが分かる。
「授業で習う」、「楽器を習う」、「英会話を習う」といった使い方でも同様に、先生や講師に教えてもらうことがその前提にあるのだ。
「倣う」の意味と使い方
一方、「倣う」には、「まねをする」という意味合いが強く出る。
そのため、「倣う」の「倣」という漢字は、「模倣(もほう)」という風に「真似をする」という意味の言葉でも使われる。
「先例に倣って〇〇する」とか「お手本に倣って〇〇する」という風に使われるのも、先人たちの行動やお手本をまねする、という感覚から来ている。
つまり、「すでにあるものをお手本として真似る」という意味合いがある。
「マネをする」というのは、「猿真似」という言葉もあるように、何となく悪いイメージが強くなってしまっている。著作権などの知的財産権に対する意識も、そういった傾向に拍車をかけているようだ。
ただ、人が何か新しいことを学ぶには、「マネをする」という行為は欠かせない。なぜなら、知識というものは、過去の知識の上に積み重ねられるものであり、新しい知見はそういった知識の積み重ねの上に成り立つものだからである。
「学び」というのは「まねび」、つまり「まねをする」ことから来ている、と何かで読んだことがある。その通りだと思う。
日本の職人も、他人の技術を模倣し、盗むことで、その技術を後世に伝えていったのである。
「効う」と「嫺う」
「ならう」には、他にも「効う」と「嫺う」という同訓異字がある。
このうち、「効う」は「倣う」と同様の意味を持つ。
また、「嫺う」は難しい字だが、「物事に習熟する」という意味合いがある。