昔、おそらく小学生の頃だったと記憶しているが、とても気に入って繰り返し読んだ本があった。イソップ童話の本だ。それが、この『イソップのおはなし』だ(より正確に言えば、この「イソップのおはなし」は、私が子供の頃読んでいた「イソップどうわ」の復刊である)。 イソップ童話そのものの寓話自体も面白かったが、この本が持つ、独特なタッチで描かれた挿絵にも私は魅かれていた。最初、その挿絵を見たときは、子供心に「変な絵」という印象でしかなかったが、次第にイソップ童話とその挿絵は私の中で「対」の関係になっていった。イソップ童話といえば、その挿絵を思い出す、という具合だ。 今思えば、とても優れていた挿絵であったと感じる。私が小学生の頃は、まだ日本の絵の世界は、今のように薄っぺらいアニメ調の絵に毒されていなかったように思う。否、現在のアニメ調の絵が悪いのではなく、 … [もっと読む...] about 『イソップのおはなし』の書評