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農具が実は戦争時の秘密兵器だった?登戸研究所の遺産が農家に

NHK「所さん!大変ですよ」という番組で、農家の人が使っている農具が、実は第二次世界大戦中の秘密兵器だった、ということを特集していた。

一体どういうことなのだろうか。

棒状の秘密兵器

「秘密兵器」見つかったのは、長野県駒ケ根市にある農家。矢沢古里さんという方の家だという。

映像で見る限り、何の変哲もない普通の農家のようだが。

矢沢さんは、その「秘密兵器」の農具を手元に残しており、それを見せてくれた。

その秘密兵器は、長さ1メートル程の棒。ドラムの棒のようにも見える。

その棒の先端に火をつけると、勢いよく燃え出した。燃え方は普通の燃え方ではなく、結構勢いが強い。

また、水で消火した後も、軽く水滴を軽く拭いた後にまた火をつけると、勢いよく燃え出す。

この棒の本来の目的とは一体何だったのだろうか。

登戸研究所で開発されたか

この棒は、矢沢さんの母親が、終戦直後の70年前に近くの神社で見つけたという。

当時、この場所には日本陸軍の研究所である「登戸研究所」があり、そこで作られたものではないかと推測されているようだ。

矢沢さん自身は、この棒をハチの巣の駆除に使っていたという。先端に火をつけて、それで蜂の巣を燃やすのだ。

当初は10本近くあったが、ハチの巣を駆除するうちに、数は減っていった。3本残っていたのだが、半年前に自宅に明治大学の山田朗教授がやってきて、「大変貴重なものだ」と言ったため、2本を教授に渡したのだという。

この山田朗教授は明治大学で第二次世界大戦の兵器開発などを研究。

この教授によると、この謎の棒は、敗戦間際に「登戸研究所」が作ったものらしい。

明治大学では、この棒はケースに入れられて大切に保存・展示されていた。

登戸研究所とは

山田教授によると、登戸研究所は、陸軍の秘密戦のための兵器や道具を開発していた研究所である。

スパイ活動、破壊活動など、相手を混乱させるような「裏側の戦争」に携わっていたようだ。

登戸研究所は、第二次世界大戦中、日本陸軍の最高機密の一つであった。

登戸を語るなかれ」とも言われていたようだ。

国内最高の科学者たち 250人が集められ、新兵器の開発に携わったのだという。

その機密性からなのか、登戸研究所で開発されたものは、敗戦時に全て爆破や燃やされるなどして、徹底的に処分されたという。

そのため、農家で発見された「燃える棒」は、かなり大きな発見だったのである。

陸軍登戸研究所の真実

登戸研究所で研究されていた兵器

登戸研究所で研究されていた兵器には、以下のようなものがある。

・缶詰型爆弾

これは、缶詰に似た爆弾。缶詰の外見がカモフラージュとして使われたようだ。

・怪力電波

東京国立近代美術館フィルムセンターに所蔵されている陸軍宣伝映画『兵器の現況と其趨勢』(昭和8年)では、1000キロワットの電磁波(怪力線)を航空機や列車に発射して殲滅する様子が描かれている。

また、怪力電波により、実験で数メートル先の動物を殺すことに成功したという記録もあるようだ。

・偽札

中国経済を混乱させるために、偽札も作っていたという。

登戸研究所は、神奈川県の登戸にあったのだが、昭和20年3月、戦局の悪化に伴い、長野県の駒ケ根にその一部が疎開した。

燃える棒は、その際に開発されたと見られている。

「燃える棒」が物語る日本の物資不足

山田教授によると、燃える棒は、「放火のための道具ではないか」とのこと。

また、この「燃える棒」は、敗戦直前、日本陸軍がおかれていた厳しい状況を物語るのだという。

というのも、原材料のほとんどは、松脂などの植物性のもの。つまり、簡単に手に入るものだった。

当時の日本の物不足というのが決定的だったのである。

なお、東京都立中央図書館では、陸軍で作戦の立案に関わっていた人物の敗戦直前の日記が見つかった。

日記の題名は、『作戦秘録』と読める。

この日記に、登戸研究所に対する命令とみられる以下のような記載が見つかった。

「登戸

爆薬 十六万

焼夷 十六万」

兵器研究家の佐山二郎さんによると、この「焼夷」は「放火」の意味なのだそう。

この記載は、そういうものを大至急作ってくれという指令なのだそうだ。

おそらく、ゲリラ戦で使うような物を本土決戦に備えて作れ、といったものらしい。

なお、「燃える棒」が戦場で使われたという記録はない。

「拡散思考」によって生まれた?

脳科学者の澤口俊之さんによると、時間制限や精神的ストレスといった負荷がかかると新しい物事を考えだす「拡散思考」が生まれやすくなるそうだ。

脳に負荷がかかると、平時では考えられないような不思議な兵器を作り上げたりするらしい。

「燃える棒」も、「拡散思考」によって生み出されたものなのだろうか。

「ロケット推進式陸上爆雷」とは

国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソンさんによると、1943年にはイギリスが「ロケット推進式陸上爆雷(The Great Panjandrum)」と呼ばれる兵器を開発したという。

この兵器は、ノルマンディー上陸作戦に向けて開発が進められたそうだ。

この兵器が近年に再現されたそうで、その動画がYou Tube に公開されている。

この兵器も、実際に使われることはなかったようだ。

「風船爆弾」とは

登戸研究所では、アメリカ本土を直接攻撃する兵器も開発していた。

風船爆弾」と呼ばれるものだ。

大きな気球で爆弾を運搬し爆発させる兵器なのだが、この気球部分にはなんと「和紙」と「こんにゃく」が使われていたのだという。

和紙の町」として知られる埼玉県小川町の図書館に、この風船爆弾に使われた和紙が残っている。

この和紙は「気球紙」と呼ばれ、風船爆弾のために使われたという。

図書館にあるこの風船爆弾の図面には、以下のような記載が見つかった。

「「ふ号」

気球本体(直径10メートル)

高度保持装置

バラスト砂袋

4キロ焼夷弾2個

15キロ爆弾」

この風船爆弾に、水素ガスをつめて、アメリカへ飛ばしたのだ。

五重に貼り合わされた気球紙を600枚つなげて、気球部分を作ったのだという。

和紙は木の繊維である「こうぞ」でできているのだが、このこうぞは手では絶対破けないほど丈夫だ。

そして、研究の結果、和紙とこんにゃくの組み合わせが、気球紙を作るうえで最高だったのだという。

コンニャク生産日本一という群馬県下仁田町に、風船爆弾の開発に協力した会社がまだ残っているそうだ。

この町で作られたこんにゃくが、実際に風船爆弾に使われたのである。

和紙のこうぞには、「こんにゃくのり」が使われている。

こんにゃくのりとは、こんにゃくの粉を水で溶かしたものだ。

このコンニャクのり、和紙の強度を高めるだけでなく、和紙とのりが隙間なくなじむことにより、水素の透過率が劇的に下がったのだという。

なんと、ゴム風船と比べ、こんにゃくのりで作った風船は、水素の透過率が10分の1だったという。

こんにゃくのりの繊維が、和紙の繊維に隙間なく入り込むことにより、この脅威の透過率が実現したのだ。

風船爆弾のメカニズムと実際の被害

元登戸研究所工員の太田圓次さん(放送当時87歳)によると、気球部隊が昭和19年9月に結成された。

この部隊では、非常に高度な兵器が開発されたという。

風船爆弾のメカニズムは以下のようなものだ。

日本で打ち上げられた風船爆弾は、高度1万メートルに到達する。

そこで、東に向かうジェット気流に乗り、時速200キロで飛行するのだという。

飛行中、気球から水素が抜けるが、気圧計が自動で高度を感知、重りの砂袋(バラスト砂袋)を1つ落下させる。

すると、砂袋1個分軽くなった気球は、再び上昇する。

このように、気球が下降する度に、砂袋を1つずつ落下させることで、気球を落下させることなく、アメリカ本土へ接近させる。

日本からの距離を計算し、およそ30個搭載された砂袋全てを落としたところで、風船爆弾はアメリカへ到達。

そこで、焼夷弾と爆弾をタイマーで落下させる計画だったのだという。

昭和19年11月、風船爆弾を使った作戦が開始された。作戦名は、そのままズバリ「ふ号作戦」。

なんと、9000発以上が打ち上げられた

アメリカの記録によると、1割近い1000発がアメリカに到達、各地で山火事などを引き起こし、6人が死亡したのだという。

これは、ジェット気流という自然現象を利用した兵器としては驚くべき成果ではないか。残りの8000発の行方が気になるが。

しかし、兵器としての威力という点では、はっきりいってアメリカには足元にも及ばなかった。

「ふ号作戦」から3週間後に、B29爆撃機による日本への攻撃が本格化したのだが、アメリカに到達した1000発分の風船爆弾の威力は、B29搭載の爆弾5機分と同等だったというのだから。

「震電」にも職人技

風船爆弾の開発には、和紙職人やコンニャク農家などが協力したが、こういった職人が開発に関わった兵器は風船爆弾だけではない。

海軍局地戦闘機「震電」には、なんと風呂桶職人が協力したのだそうだ。

風呂桶職人は、微妙な部品の曲げ方などを指導したそうだという。

[NHK DVD] B29を迎撃せよ 幻の戦闘機・震電

参考資料:
所さん!大変ですよ「まさか…愛用の農具が”幻の秘密兵器”だった!?」、NHK、2015年11月26日放送


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