松山も困惑、「5試合出場義務」について

国内男子ツアーについて、ある問題が注目を浴びている。それは、日本ゴルフツアー機構(JGTO)が新たに設けたルール、「複数年シードを持つ選手に対し、年間5試合の出場を義務付ける」というものだ。

このルールは、主にアメリカツアーを主戦場としている松山英樹石川遼の人気を国内ツアーへの人気へつなげようとするJGTOの目論見だと考えられる。つまり、この縛りを設けることにより、アメリカを主戦場とする松山に日本の試合にも沢山出てもらい、それが日本のゴルフ人気の向上につながることを期待しているものだと考えられる。この新ルールにより、昨年まで出場義務は「0試合」だったものが、急に「5試合」に増えた。

この背景には、国内ゴルフの厳しい状況がある。国内ゴルフの人気低迷に伴い、国内の試合数は激減した。2014年の国内での試合数は、過去最低の23試合で、これは1983年の46試合の半分に過ぎない。*1 国内のゴルフ人気の凋落にどうやって歯止めのかけるのか。その対策の一つが新ルールの設定ということらしい。

このJGTOの突然の新ルールの設置に対し、松山は困惑を隠せない。

というのも、松山は2013年シーズンに国内賞金王になり、14年から5年間のシードを獲得していたからだ。このシードを獲得した時点では、もちろん5試合の出場義務などはなかった。

この5試合の出場義務の新ルールについて初めて耳にした時の思いについて、松山はこう語ったという。
「正直に言えば…『ああ、もう好きにすれば…』という感じがした」*2

そして、松山は、国内で5試合出場できる保証はないとして、国内ツアーのメンバー登録はしない、という決断を下した。もちろん、これは国内ツアーにまったく参加しないという意味ではなく、推薦などを通じて国内の試合に出場することもあるという。

この松山のシード辞退の決断について、石川遼が言及した。
「ルールで縛っても結局(松山)英樹みたいにメンバー登録しないという選択もできる。(ゴルフは)選手一人一人が個人事業主。それぞれに考え方がある。」 そして、この新ルール設定は、海外に出ていこうとする意欲的な選手を出しにくくする制度ではないか、と自身の意見を述べた。*3

世界で活躍することにより、高い人気を誇る松山英樹。その人気を国内ゴルフの人気へと繋げたいJGTOだが、その目的を達成するために、選手の足かせとなるルールを姑息ともいえるやり方で設定するとは、お粗末ではないか。

今やスポーツ人気は、世界を舞台とする選手によって作られる時代だ。子供や若者は、世界で活躍する選手に憧れ、観客もそういったチャレンジ精神と実力にあふれる選手を応援する。そういった選手を応援せず、むしろ足かせとなるような方針しか出せない機構は、やはり時代を逆行していると言わざるを得ない。

国内のゴルフを盛り上げたい、という思いは分かる。しかし、あらゆるスポーツにおいて、最も大事なのは、選手である。その選手を軽視し、機構側の立場を優先するようなことがあってはならないのだ。


参考資料:
*1 日本ツアー開幕…石川遼、新規定は「その場しのぎに思える」、ゴルフダイジェスト・オンライン、http://news.golfdigest.co.jp/news/gdoeye/jgto/article/49418/1/?car=md-news-relay
*2 「おれの資格はどこへ?」松山英樹が抱いたJGTOへの困惑、ゴルフダイジェスト・オンライン、http://news.golfdigest.co.jp/news/jgto/article/54629/1/
*3 松山に同調 石川遼 “出場義務規定5試合”への持論を語る、ALBA.Net、http://www.alba.co.jp/tour/news/article/no=33713
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記事カテゴリ:
ゴルフ Golf

投稿日:
2015年1月16日 

更新日:    


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