
「原子」と「分子」、理科の教科書やニュースでもよく目にしますよね。
けれども、「何が違うの?」と聞かれると、はっきり答えられない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「原子」と「分子」の違いを、初めての人にもわかりやすく丁寧に解説します。
また、原子の構造や名前の由来、水分子の正体まで、図解なしでもイメージできるような言葉で説明していきます。
原子(atom)とは何か?|すべての物質をつくる「基本の粒」
私たちの身の回りにあるすべての物質――水、空気、鉄、木、プラスチック、そして私たち人間の体も――実は目に見えないほど小さな「粒(つぶ)」でできています。
その粒こそが「原子(げんし)」です。
原子とは?
原子とは、物質をつくる最も小さな単位であり、これ以上は化学的に分けることができない「基本の粒子」です。
たとえば、水や酸素といった物質も、突きつめていけばすべて原子からできています。
原子という言葉の語源
「原子(atom)」という言葉は、古代ギリシャ語の「アトモス(atomos)」に由来します。
- 「a(否定)」+「tomos(切る)」=atomos(切ることができないもの)
つまり、「atomos」は「これ以上分けることができないもの」という意味で、当時の哲学者たちは、「物質をどこまでも細かくしていくと、最終的に“それ以上は分けられない粒”にたどり着くはずだ」と考えました。
この考え方が、現在の「原子」=物質の最小単位という科学的な概念のもとになっています。
このように、原子という考え方は、科学技術が発展する前から人々が自然を観察し、論理的に導き出してきたアイデアだったのです。現代科学では、この「原子」の中にもさらに小さな構造があることがわかっていますが、「原子」は今でも物質を考える上での最小の「単位」として使われています。
原子の構造|小さな中に広がるミクロの世界
原子というと、まるで「小さな点」のように思えるかもしれませんが、実はその内部はとても複雑な構造をしています。
原子の中にはさらに小さな粒――陽子(ようし)・中性子(ちゅうせいし)・電子(でんし)が存在し、それぞれが大切な役割を持っています。
原子の中心には「原子核(げんしかく)」がある
原子のちょうど真ん中には、原子核(げんしかく)という小さなかたまりがあります。
この原子核は、次の2つの粒子からできています。
- 陽子(ようし):プラスの電気(正電荷)をもつ粒子
- 中性子(ちゅうせいし):電気をもたない粒子
この2つがぎゅっと集まって、原子核をつくっています。
この原子核は、原子全体の質量(重さ)のほとんどを占めています。とても小さいけれど重い部分です。
原子核のまわりには「電子(でんし)」がある
原子核のまわりには、電子(でんし)という小さな粒子が存在しています。
電子は、マイナスの電気(負電荷)をもっていて、原子核のまわりをとても高速で動き回っています。
この電子は、原子の「広がり」を決めており、原子全体の大きさや反応の性質に深く関わっています。
イメージで覚えよう|ミニチュア太陽系のような構造
原子の構造は、よく「ミニチュアの太陽系」にたとえられます。
- 中心にある原子核(太陽)
- そのまわりを回る電子(惑星)
ただし、実際の原子では、電子は決まった「軌道」を描いて回っているわけではなく、「電子雲(でんしうん)」と呼ばれるぼんやりとした領域の中に存在していると考えられています。
なぜプラスとマイナスが必要なの?
原子は、陽子(+)と電子(−)が同じ数だけあることで、全体としては電気的に中性になります。
- 陽子:+(プラス)
- 電子:−(マイナス)
- 中性子:0(電気をもたない)
このバランスが崩れると、イオンと呼ばれる別の形になってしまいます。
このように、原子は「とても小さい粒」でありながら、その中にはいくつもの粒子が働き合い、秩序だった構造を保っているのです。
まるで小さな宇宙のようですね。
原子の大きさと重さ|目に見えない、けれど確かに存在する粒
原子は、あまりにも小さすぎて肉眼では見ることができない粒子です。
しかし、この小さな粒が集まることで、私たちの世界が形づくられています。
原子の大きさ(直径)
原子の直径は、だいたい0.1ナノメートル(nm)ほどです。これは1メートルの100億分の1という、想像を超えるほど小さなサイズです。
たとえば:
- 髪の毛の太さ:およそ5万〜10万ナノメートル
- 原子の大きさ:約0.1ナノメートル
つまり、髪の毛の太さには、数十万個の原子が横に並べられるということになります。
原子の質量とアボガドロ数
原子の質量は、非常に小さく、たとえば水素原子1個の重さは約1.66 × 10⁻²⁴グラム(=0.00000000000000000000000166グラム)ほどです。
このように小さな原子が集まってできた1グラムの物質の中には、およそ6.02 × 10²³個の原子が含まれています。
この数は、「アボガドロ数(アボガドロすう)」と呼ばれるもので、
化学の世界では、「1モル(mol)」という単位のもとになる重要な定数です。
たとえば:
- 水素1モル(約1g)には、水素原子が6.02×10²³個
- 酸素1モル(約16g)には、酸素原子が6.02×10²³個
このように、アボガドロ数は目に見えない原子や分子の「個数」を数えるためのルールとして使われています。
身のまわりのすべてが「原子の集まり」
- 私たちの体
- 呼吸している空気
- 飲んでいる水
- 手に持っているスマホやペン
こうしたものはすべて、目に見えないほど小さな原子が集まってできたものなのです。
原子1つでは何も見えませんが、無数に集まることで、目に見える世界が形づくられている――それが「原子」という粒のすごさです。
原子の種類と「原子番号」|世界をつくる約100種類の基本粒子
地球上には、さまざまな物質が存在していますが、それらをつくっている「原子」には、種類の違いがあります。
この原子の種類のことを、「元素(げんそ)」と呼びます。
約100種類以上の「元素」がある
現在、自然界や人工的に見つかっている元素は、118種類(※2025年時点)。
このうち、約100種類ほどが自然界に存在する原子です。
たとえば:
- 水素(H)
- 酸素(O)
- 炭素(C)
- 鉄(Fe)
- 金(Au)
- ナトリウム(Na)
これらはすべて異なる種類の原子で、それぞれが性質や重さ、ふるまいの異なる「個性」を持っています。
原子の「種類」は陽子の数で決まる
では、どうやって「この原子は水素、この原子は酸素」と見分けるのでしょうか?
それを決めるのが、原子の中心にある「陽子(ようし)」の数です。
陽子は、原子核の中にあるプラスの電気を持つ粒子です。そして、陽子の数こそが原子の「種類(元素)」を決める決定的な特徴なのです。
「原子番号(げんしばんごう)」とは?
原子核の中にある陽子の数のことを、「原子番号」といいます。
これは元素を分類するための番号で、周期表でもこの原子番号の順に並べられています。
例を見てみましょう:
| 元素名 | 元素記号 | 陽子の数(=原子番号) |
|---|---|---|
| 水素 | H | 1 |
| ヘリウム | He | 2 |
| 炭素 | C | 6 |
| 酸素 | O | 8 |
| ナトリウム | Na | 11 |
| 鉄 | Fe | 26 |
| 金 | Au | 79 |
たとえば、酸素原子(O)は陽子を8個持っているため、原子番号は8です。
酸素の原子核から陽子が1つでも減ったり増えたりすれば、もうそれは酸素ではなく、まったく別の元素になってしまいます。
原子番号がわかれば、その原子が何かがわかる
つまり、「陽子の数(=原子番号)」がわかれば、その原子が何の元素か一発でわかるのです。
このルールは例外がなく、宇宙中すべての原子に当てはまる、非常に基本的で大切な考え方です。
ちなみに、「同じ陽子数でも中性子の数が違う原子を『同位体』といいます。たとえば、水素には重水素や三重水素という同位体があります。
このように、原子は単に「つぶ」ではなく、ひとつひとつが固有の番号と性質を持った存在なのです。
この次は、それらの原子が組み合わさってできる「分子」について見ていきましょう。
分子(molecule)とは?|原子がつながってできる「物質の最小単位」
私たちがふだん目にしている「水」「酸素」「二酸化炭素」などの物質は、1つ1つが小さな粒でできています。
この粒の正体が「分子(ぶんし)」です。
分子は「原子が集まってできたまとまり」
分子とは、2個以上の原子が化学的な力(=化学結合)によって結びついた粒子のことです。
1つのチームのように、決まった種類と数の原子がまとまって、「ひとまとまりの形」で存在しています。
たとえば:
- 水(H₂O):水素原子2個と酸素原子1個が結びついた分子
- 二酸化炭素(CO₂):炭素原子1個と酸素原子2個がつながった分子
- 酸素(O₂):酸素原子2個が結びついた分子(同じ原子でも分子になる)
分子は「物質の性質を保った最小の単位」
ある物質をどんどん細かくしていくと、最後に「その物質としての性質をまだ保っている最小の粒」にたどり着きます。
それが分子です。
たとえば:
- 水をどんどん分けていくと、やがて水の性質をもつ最小の粒、「水分子(H₂O)」になります。
- これ以上分けると、水素原子と酸素原子に分かれてしまい、「水」とは呼べなくなります。
分子=「原子の組み合わせによってできるオリジナルな形」
重要なのは、分子の種類によって、結びついている原子の「種類」と「数」は決まっているという点です。
例:
- 水:H₂O → H(×2)+O(×1)
- 二酸化炭素:CO₂ → C(×1)+O(×2)
- メタン:CH₄ → C(×1)+H(×4)
このように、どんな原子が、いくつ、どんな形で結びつくかによって、分子の性質や働きがまったく変わるのです。
分子と原子の違いをひとことで言うと?
分子:原子がいくつか集まってできた、性質を持つ最小のまとまり(チーム)
原子:物質をつくる最小の構成要素(ひと粒)
「水」はどこまで分けても「水」ではない?|分子という最小単位のはなし
コップに入った水を思い浮かべてみてください。
それを半分に、また半分に……と、どんどん小さく分けていったらどうなるでしょう?
目に見えないほど小さな「水のかたまり」になっても、まだそれは「水」です。
でも、あるところをこえると、もはや「水」とは呼べなくなってしまいます。
「水の性質」を保てるギリギリの単位が「水分子(みずぶんし)」
水をどこまでも細かく分けていった先にたどり着く、「これ以上分けたら水じゃなくなる」という最小単位――それが、水分子(みずぶんし)=H₂Oです。
水分子は、
- 水素原子(H)2個
- 酸素原子(O)1個
が、しっかりと化学結合で結びついたひとかたまりです。
この水分子をさらに分けてしまうと、水素や酸素といった別々の原子になってしまい、もうそれは「水」ではありません。
分子とは「物質の性質を保った最小の粒」
このように、「分子」とはその物質の性質を保ったままで存在できる最も小さな粒子のことです。
- 水分子 → 水の性質(液体・蒸発・氷になる等)を持つ
- 水素原子や酸素原子 → 水ではない別の性質を持つ
つまり、「水」としてふるまうためには、水素と酸素が決まった形で結びついていなければならないということです。
分子の種類は、つながる原子の「種類」と「数」で決まる
分子は、どの原子が何個結びつくかによって名前も性質も変わります。
たとえば:
| 分子名 | 構成する原子 |
|---|---|
| 水(H₂O) | 水素原子2個+酸素原子1個 |
| 二酸化炭素(CO₂) | 炭素原子1個+酸素原子2個 |
| アンモニア(NH₃) | 窒素原子1個+水素原子3個 |
このように、「分子」はただの小さな粒ではなく、原子が組み合わさってできた、物質の性質をもった“最小のかたまり”なのです。
分子の構造例|水素分子と水分子のちがい
分子には、同じ種類の原子だけでできているものと、異なる種類の原子が組み合わさってできているものの両方があります。
ここでは、その代表的な例として「水素分子」と「水分子」を見てみましょう。
🔹 水素分子(H₂)|同じ原子が2つくっついた分子
水素分子は、水素原子(H)2個が結びついてできた分子です。
このように、同じ種類の原子どうしが化学的に結びついてひとまとまりになることもあります。
- 化学式:H + H → H₂
- 読み方:えいち・ツー
- 特徴:気体として存在し、非常に軽く、燃えやすい性質をもっています。
水素分子は、最も単純な構造の分子であり、原子どうしが共有結合(おたがいに電子を出し合ってつながる)で結ばれています。
🔹 水分子(H₂O)|異なる原子が組み合わさった分子
水分子は、水素原子2個と酸素原子1個が結びついてできています。
化学式は有名な「H₂O(エイチ・ツー・オー)」ですね。
- 化学式:H₂O
- 構造:酸素原子が中央にあり、水素原子が左右にくっつくような形(角度が約104.5度)
- 特徴:水としての性質(液体である、凍る、蒸発するなど)を持つ
水分子は、異なる種類の原子が決まった数・位置関係で結びつくことによって、「水」としての性質を生み出しているのです。
原子と分子の違いまとめ
| 比較項目 | 原子(Atom) | 分子(Molecule) |
|---|---|---|
| 基本の定義 | 物質の最小単位 | 原子がいくつか結びついた単位 |
| 構成 | 原子核+電子 | 複数の原子(2個以上) |
| 機能 | それ以上は分けられない | 物質の性質を保った最小の粒子 |
| 例 | 水素(H)、酸素(O) | 水(H₂O)、二酸化炭素(CO₂)、水素分子(H₂)など |
このように、原子は物質をつくる「もっとも基本的なつぶ」であり、
分子はその原子がいくつか結びついてできた「物質の性質をもつ最小単位」です。
身の回りのあらゆるもの――空気、水、食べ物、体、道具――すべては、原子が集まり、分子となり、組み合わさってできています。
目には見えませんが、私たちの世界はこうしたミクロの粒たちでできているのです。
そのしくみを知ることで、自然や科学への理解がぐっと深まっていくでしょう。
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