2020年7月9日、松茸が「絶滅危惧種」に指定されました。
果たして、松茸はもう食べられなくなるのでしょうか。
IUCN(国際自然保護連合)が松茸を絶滅危惧種に指定
今回、松茸を絶滅危惧種に指定したのは、IUCN(国際自然保護連合)という機関です。
この機関は、世界の野生生物の専門家などで構成されており、本部はスイスにあります。
IUCNは、「レッドリスト」なるものを作成しており、そのリストでは絶滅する危険のある世界中の野生生物がその危険性にしたがって分類されています。
そして、2020年7月9日に最新のレッドリストが公表されていたのですが、その中に日本人が愛する「松茸」が入っていたということです。
マツタケが絶滅危惧種に指定された理由と緊急性
今回、松茸が絶滅危惧種に指定された理由は、「生育量が著しく減少している」というものです。
その原因は、病気・伐採もありますが、森林の環境悪化というものも挙げられています。世界的に松茸が育つ松林が損なわれており、「松枯れ病」の影響もあるということです。
なお、レッドリストでは、絶滅の危険性が3段階で評価されており、今回松茸が評価されたのは、危険度でいえば3番目の「危急」だということです。これは、太平洋のクロマグロと同程度の分類のようですね。
IUCN日本委員会というのがあるのですが、その道家哲平事務局長は「マツタケはかつての里山のように人の手が入ることで育ちやすい環境ができる。マツタケを守りながら利用していくために森を適度に利用する必要がある」と述べているそうです。
「マツタケの乱獲が原因」とする説は間違い
今回マツタケが絶滅危惧種に指定された理由は、上にも述べたように、「世界的に松茸が育つ松林が損なわれている」ということです。
つまり、松茸が育つ環境である松林が少なくなっている、というのが原因のようです。
そもそも、松茸をありがたがって食べているのは日本くらいだそうですね。確か「美味しんぼ」か何かで読んだのですが、海外の人はどうも松茸の匂いが苦手なようです。
今回、絶滅危惧種に指定されたのは、日本だけの話ではなく、世界規模の話です。いくら日本人が松茸をいっぱい食べたとしても、世界中の松茸が尽きるほど食べるのは無理な話でしょう。
そもそも、森林ジャーナリストの田中淳夫さんによると、キノコは地中に広く菌糸を広げていて、地上に出てくる子実体は一部にすぎないそうです。
ですから、キノコをいっぱい採ったとしても、菌糸のほんの一部を採取するということに過ぎないので、これが絶滅の原因ではないということです。
というわけで、松茸の乱獲が原因である、というのはどうも信用できる説ではないですね。
松茸は食べられなくなるのか
松茸が絶滅危惧種に指定された、ということで、我々日本人が気になるのは、「もうマツタケは食べられなくなるの?」ということではないでしょうか。
どうやら、その心配は(今のところ)杞憂になりそうです。
絶滅危惧種に指定された、ということは、それがそのまま「食べるの禁止」とイコールではない、ということです。
今回の絶滅危惧種指定を受けて、江藤農林水産大臣は以下のように述べています。
「マツタケが絶滅危惧種に指定されたことは受け止めなくてはいけないと思っている。食べてはいけない、採取してはいけないということではないので誤解がないようにしてほしい」
つまり、松茸が絶滅しないように気を付けなければならないけれど、食べたらダメ、というわけではないよ、ということですね。
クロマグロやニホンウナギも絶滅危惧種
上述したように、クロマグロも危険危惧種に指定されており、その危険度は松茸と同じ3段階目の「危急」です。
ちなみに、ニホンウナギは、危険度の2番目にあたる「危機」に分類されているそうです。
ウナギは松茸よりももっとヤバいということですね。
-参考資料-
・『マツタケが絶滅危惧種に 国際自然保護連合 最新レッドリスト』、NHKニュース、2020年7月9日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200709/k10012507121000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_002・『マツタケが絶滅危惧種になった理由は、森が豊かになったから』、Yahoo、2020年7月11日、https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakaatsuo/20200711-00187648/