皆さんは、社会において不公平感を持つことはないだろうか。
社会のルールや法律は、社会の安定を目指すものであるけれど、しばしば不公平感を引き起こす原因にもなる。
また、国によっては、多数を占める民族にとって有利な政策が存在することもある。
マレーシアでは、「ブミプトラ政策」と呼ばれる経済政策が昔から採られている。これは、多数派であるマレー系の民族を優遇する政策だ。
ブミプトラ政策とは
「ブミプトラ」とは、「先住民」とか「土地の子」といった意味をもつ。
このブミプトラ政策により、教育や就職、そしてビジネスにおいても、マレー系の民族が中華系などの民族よりも優遇されてきた。
不公平な立場に置かれた場合にどうするか
さて、自分が不公平な立場に置かれた場合にどのように行動すべきだろうか。
採りうる方針としては、主に以下の3つが思い当たる。
1.自分を不公平な立場に置く法律やルールを変える。
2.不公平な立場に置かれる国や場所から離れる。
3.我慢して受け入れる。
それぞれ検討してみよう。
1.法律やルールを変える
この方針において最も簡単な方法は、デモなどを起こすことだろう。
実際、社会的に力が無い者が不満を表明する方法として、デモが最も頻繁に行われていると思う。
ただ、こういったデモが奏功する例は少ない。まず、賛同する人数を集める必要があるし、成熟した社会や管理された社会であればあるほど、デモが成功する可能性は低いようだ。
最近の成功例では、韓国の反大統領デモが思い当たるが、韓国の例はかなり特殊だと感じる。
最も民主的であり、大人な方法は、自らが政治家になるか、自らを代弁してくれる議員に望みを託すことであるが、これもなかなか難しい。
特に、先の「ブミプトラ政策」のように、多数派に有利な政策を少数派が変えるのは、多数派を重視する民主主義の元ではさらに難しくなる。
自らが政治家になるにしても、他にやりたい事があるのに、自分の立場を有利にするために自分の人生をささげるというのは、なかなか難しいことである。
2.不公平な立場から逃げる
現状において、この方針が最も成功率が高くて、自分の時間も大切にできる建設的なものだと思う。
マレーシアにおいても、実際にこの方針を貫くことによって成功した人物がいる。金融ベンチャー「ファンディング・ソサエティーズ(Funding Societies Pte Ltd.」を起こしたケルビン・テオ(Kelvin Teo)である。
ケルビン・テオってどんな人?
ケルビン・テオは、マレーシア南部の町で農園会社に勤める父と教師である母との間に生まれた、華人系のマレーシア人だ。
学業で最高水準の成績を残したにも関わらず、国内の奨学金を得られなかったという。ブミプトラ政策の影響なのか分からないが、本人はそう感じたようだ。
そこで、テオは母国に見切りをつけ、15歳の時に単身シンガポールに渡った。つまり、不公平な立場から逃げたわけである。
その後、猛勉強の末、名門であるシンガポール国立大学を卒業し、米系コンサル会社に就職する。その後、ハーバード大学に入り直す。
そこで、PtoP金融に目を付け、在学中にインドネシア人の同級生レイノルド・ウィジャヤ(Reynold Wijaya)氏と共に起業に踏み切る。これが、先に述べた「ファンディング・ソサエティーズ」である。
ファンディング・ソサエティーズでは、財務諸表に頼らず、経営者向け心理テストを使用し、信用力と貸出金利を算出する。
現在、テオは自分のことを「国籍を超えた東南アジア人」であると主張する。
テオのように、自分の出自や属する民族によって社会的に不利な立場に置かれても、その枠組みを超えて成功することは可能だ。
3. 我慢して受け入れる
この方針は、おそらく大多数の人間によって採られている方針だ。「採る」というのは積極的な意味合いになるので少し違うけれど。要は、不公平な立場は嫌だけれど、それに対して積極的に何かアクションを起こす努力は払いたくないということだ。
この方針もアリではある。我慢して不公平な立場を受け入れた上で、出自などの変えられない部分を超えた個人の能力を努力や勉強で磨き、自分の価値を社会に認めさせることである。実際、日本でもこういった成功者は数多くいる。
ただ、この方法で成功するためには、並外れた努力はもちろん、類まれな能力や周りの人間を惹きつけるような人間性も必要となるだろう。
最も選びたくないのは、何も変えようとせず、愚痴や不平だけを吐いて生きる人生である。
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