
最近耳にする言葉に「多頭飼育崩壊」というものがある。
多頭飼育崩壊とは、動物をペットとして飼育していた飼い主が、無責任に管理したことにより、ペットが繁殖し過ぎて手に負えなくなり、放置するような状態になることを指す。
この問題は、日本だけで起こるものではない。英語では Animal Hoarding(アニマルホーディング)と呼ばれ、一種の精神疾患が原因であることもあるようだ。
多頭飼育崩壊 神戸市灘区の事例:53匹の猫を放置
2017年4月、神戸市東灘区に住む40代の女性が、市営住宅を強制退去処分となった。
その原因となったのは、異臭などの迷惑行為であった。
この女性の部屋には、ネコ53匹が放置されていたという。
60平方メートルの部屋でペットの飼育は禁止
女性が借りていた市営住宅の部屋は、3DKの約60平方メートルの部屋で、ペットの飼育は禁止されていたという。
ところが、2015年秋ごろには猫の糞尿に対する苦情が出ていたようだ。
市の指導も無視
女性は、神戸市から改善指導を受け、「片づける」と繰り返したいたようだが、状況は変わらなかった。
神戸市は、神戸地裁に提訴の上、2017年4月に強制執行に踏み切った。
部屋は崩壊状態
強制執行の担当者が女性が借りていた部屋を確認したところ、部屋には53匹の猫がおり、部屋は荒れ果てた状態だったという。
木の柱は傷だらけ、畳は腐食、そして床には穴が開いていたという。
また、複数の猫の死骸も見つかったようだ。
かなり悪質な管理であったことが伺える。
神戸市によると、女性の退去や消毒、修繕などに約1千万円かかる見通しだという。そして、同市は、悪質性が高いとして、女性にその費用の一部を請求することも検討しているようだ。
一部どころか、その大半を請求すべきだと思うが、女性に支払い能力があるかどうかは別問題なので、難しいところだ。
猫は放置状態か
そして、女性は増え過ぎた猫の管理に手が回らなくなり、自身の子供3人と一緒に別宅で生活していたという。
子供を3人育てる身でありながら、ネコの多頭飼育をしていたというから、驚きである。
その間、餌や水を与えに来ることはあったようだが、数匹の死骸を放置していたことからも推察されるように、かなり杜撰な飼育をしていたようだ。
多頭飼育崩壊の原因
多頭飼育崩壊の原因は、大きく分けて2つであるようだ。
1つは、経済的理由。
動物取扱業者やブリーダーなどが、販売目的で動物を大量に飼育し繁殖させてものの、売れなくなったために放置されるというもの。
日本は、この点について先進国では取り組みに遅れていると感じる。
もう1つが、過度の動物好き。
動物が好きでも、自分が飼育・管理できる範囲で飼う分には問題はないが、その限度を超えてしまう状態で、結局放置に至るというもの。
一言でいえば「自分勝手でだらしない」ということだが、周囲にかなり迷惑を与える上、動物愛護の観点からも望ましくなく、社会的な問題が大きい。
精神疾患という面で考えると、ごみ屋敷問題と通じるものがあると思われる。ゴミ屋敷問題には「溜め込み症」と呼ばれる精神疾患が問題となる場合が多い。そして、ネコ屋敷もゴミ屋敷と同等に扱われる。
精神疾患が原因であることから、法律を厳しくすれば防げるといった類の問題ではないと思われる。それは、性的犯行や万引きなどと同様である。
多頭飼育崩壊の解決策
多頭飼育崩壊は、主に動物を飼う人間側の問題であることが多く、また人間の精神的な疾患によるものも多い。
解決策としては、動物の去勢や不妊処置などが考えられる。
また、飼う人間側の精神疾患の治療を行うことも考えられるが、こちらは本人が自覚しない限り行うのは難しい。
残念ながら、抜本的かつ効果的な解決方法がないというのが現状のようだ。
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参考資料:
・『ネコ53匹、市営住宅に放置 「ふん尿で悪臭」強制退去』、神戸新聞NEXT、2017年10月30日、https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201710/0010688658.shtml