昔、おそらく小学生の頃だったと記憶しているが、とても気に入って繰り返し読んだ本があった。イソップ童話の本だ。それが、この『イソップのおはなし』だ(より正確に言えば、この「イソップのおはなし」は、私が子供の頃読んでいた「イソップどうわ」の復刊である)。 イソップ童話そのものの寓話自体も面白かったが、この本が持つ、独特なタッチで描かれた挿絵にも私は魅かれていた。最初、その挿絵を見たときは、子供心に「変な絵」という印象でしかなかったが、次第にイソップ童話とその挿絵は私の中で「対」の関係になっていった。イソップ童話といえば、その挿絵を思い出す、という具合だ。 今思えば、とても優れていた挿絵であったと感じる。私が小学生の頃は、まだ日本の絵の世界は、今のように薄っぺらいアニメ調の絵に毒されていなかったように思う。否、現在のアニメ調の絵が悪いのではなく、 … [もっと読む...] about 『イソップのおはなし』の書評
書評
珠玉の読み切り漫画集 『創生日記-藤子・F・不二雄SF短篇集①』の書評 ネタバレ注意
『創生日記-藤子・F・不二雄SF短篇集①』は、F・不二雄が描いたちょっと大人向けの短編マンガ集です。 以下の作品が収録されています。 「マイ・シェルター」 主人公が飲み屋で最初に言うセリフが「ジ・エンド」というところが、作者の意図していたかどうかは定かではありませんが、この作品のテーマを表しているようで面白いですね。 夢オチに近い内容ですが、現実に起こる可能性のある出来事を鋭く描写しています。 人間の愚かさはあらゆるところで見受けられますが、その最大たるものは、「愚かだと分かっていることをやめられない愚かさ」なのかもしれません。 また、他人がどうにかしてくれる、とか、こんなことが起こるはずがない、という、甘えにも似た、根拠のない希望論を持ちがちなのも人間の特徴です。 「創生日記」 神様になって世界 … [もっと読む...] about 珠玉の読み切り漫画集 『創生日記-藤子・F・不二雄SF短篇集①』の書評 ネタバレ注意
ネタバレ注意『メフィスト惨歌-藤子・F・不二雄SF短篇集②』の書評 秀逸なオチ
この短編集は、読み切り漫画集である『創生日記-藤子・F・不二雄SF短篇集①』の次作となる作品集です。 ・珠玉の読み切り漫画集 『創生日記-藤子・F・不二雄SF短篇集①』の書評 ネタバレ注意 『メフィスト惨歌-藤子・F・不二雄SF短篇集②』は、F・不二雄が描いたちょっと大人向けの短編マンガ集です。 以下の作品が収録されています。 「メフィスト惨歌」 仕事ができない悪魔が人間にやり込められるという話です。 「悪魔と人間」という設定自体は、昔話でも見られるものです。 ただ、この話がそういった昔話と違うのは、人間の方が常に悪魔よりも優位な立場にあるというところでしょう。 哀愁漂うサラリーマン悪魔には同情さえ覚えます。 なぜ作品名が「賛歌」ではなく「惨歌」なのか分かります。 「倍速」 オチ … [もっと読む...] about ネタバレ注意『メフィスト惨歌-藤子・F・不二雄SF短篇集②』の書評 秀逸なオチ