「首の長い動物は?」と聞かれて、誰もが最初に思い浮かべるのは、「キリン」だろう。
そして、キリンと同じ読み方をする空想上の動物「麒麟」を知っている人も多いのではないだろうか。
有名ビール会社の商標にもなっているので、そこから知る人も多そうだ。
実は、動物の「キリン」と空想上の動物である「麒麟」の読みが同じなのは、偶然ではないのである。
「麒麟」とは何か
「麒麟(きりん)」は、中国の想像上の動物で、聖人が表れる前兆として現れると言われていた。
麒麟は、動物のキリンと同じ読み方をするが、これは実は偶然の一致ではない、というのは上述の通り。
両者には意外な関係があったのだ。
ちなみに、日本語でも「キリン」を漢字で書くと「麒麟」となる。
「キリン」の名前の由来
動物のキリンにその名前がつけられたのは、古く15世紀初めまで遡る。
15世紀初めの中国。
当時、中国は永楽帝によって治められていた。
その永楽帝に、アフリカから持ち帰られた珍しい動物が献上された。
その珍しい動物の中でも、一際注目を集めた動物がいた。
その動物は、首が長く、斑点模様、そして体長も人間よりもはるかに高かったのだ。
そう、現在私たちが「キリン」と呼んでいる動物である。
ちなみに、アフリカから珍しい動物を持ち帰ったのは、中国明朝の武将である鄭和(ていわ)が率いる艦隊だ。
鄭和の艦隊は、驚くことにアフリカ東海岸のマリンディ(現在のケニアのマリンディ)に到達するほどの大航海を行っていた。
そして、マリンディから艦隊とともに中国を訪れた商人が、キリンを含む珍しい動物を中国に持ち込んだ、というわけである。
アフリカの「ギリン」が中国で「麒麟」となった
キリンは、当時東アフリカで「ギリン(gilin)」と呼ばれていた。
その発音が中国語の「麒麟」の発音(中国語:qilin)に似ていたのだ。
そこで、その動物は「麒麟」と呼ばれるようになったということです。
ちなみに、現在、中国ではキリンのことを「长颈鹿(changjinglu)」と呼ぶ。
日本語に直訳すれば「長首鹿」、つまり「長い首の鹿」という感じだろうか。
つまり、現在の中国では、「キリン」のことを「麒麟」とは呼ばなくなったということだ。
ということは、中国本家では使わなくなった「キリン」という名称を日本は今でも律儀に使っている、ということになる。
しかし、私は中国のように「長首鹿」という名称を与えられるくらいなら、「キリン」のままで良かったと思う。
参考資料:
宮崎正勝、『モノの世界史ー刻み込まれた人類の歩み』、原書房、2002(⇒『モノの世界史ー刻み込まれた人類の歩み』の書評)