虫偏(むしへん)に土を2つ書いて、「蛙」という漢字がある。
この漢字「蛙」、虫へんがついているから、何かの虫の漢字なのかな、と考えてしまう人もいるかもしれない。
しかし、「蛙」は虫を表す漢字ではないのだ。
今回は、「蛙」について説明しよう。
「蛙」の意味と読み方
「蛙」は訓読みで「かえる」と読む。
そう、虫を食べるあの「カエル」である。
でも、蛙の訓読みは「かえる」だけではなく、意外にも「みだ(ら)」という読み方もあるのだ。
というのも、「蛙」には、「かえる」という意味の他に、「みだら」、「下品」という意味もあるからである。
また、「蛙」の音読みは「ア」、「ワ」だ。
この「ア」は、カエルの鳴き声を表すのだそうだ。
あまり音読みで使うことはないが、例えば「蛙声(アセイ)」などで使う。
それでは、「蛙」を使った言葉や表現を見ていこう。
「蛙声」とは 読み方と意味
「蛙声」は「アセイ」と読む。
意味は2つあって、1つは「カエルが鳴く声」とそのままの意味で、もう1つは「みだらな音楽」という意味。
「蛙鳴蝉噪」とは 読み方と意味
「アメイセンソウ」と読む。
これは、カエルが鳴いて、セミがやかましく鳴く、と書くことからも分かるように、「騒々しいこと」を表す四字熟語。
また、「無駄な議論」とか「内容が乏しく価値のない文章」といった意味もある。
「蝉」を「雀」に変えて、「蛙鳴雀噪(アメイジャクソウ)」とも言う。
似たような表現に、「驢鳴犬吠(ろめいけんばい)」もある。
「蛙の子は蛙」の意味
これは有名な諺だ。
「子は親に似る」とか「凡人の子は凡人」といった意味である。
同じような意味の諺として「瓜の蔓に茄子はならぬ」がある。
また、反対の意味の諺として「鳶(とび・トンビ)が鷹を生む」がある。
「蛙の面に水」の意味
この諺は、カエルの顔に水をかけても平気であるように、「どんなことをされても全く動じず平気でいるさま」を表す。
同じような意味の諺として「馬の耳に念仏」、「石に灸」、「牛の角を蜂が刺す」がある。
「蛙手」とは 読み方と意味
「かえで」と読む。
カエデ科の落葉高木の総称だ。
一般的には「楓」の漢字を使う。
カエデは、昔は「かえるて」、「かへるて」とも呼ばれていた(万葉集などにも記載されているようだ)。
というのも、カエデの葉の形が蛙の手に似ているからである。
ちなみに、カエデは英語で maple(メープル)である。
メープルシロップの生産で有名なカナダの国旗に描かれているのは maple、つまりカエデである。
「蛙股」とは 読み方と意味
「かえるまた」と読む。
寺や神社の建築で使われる装飾的な構造の受け木のことだ。
梁の上に置いて、重さを支えるために使われる。
カエルの股のような形からこの名称がついた。
「蟇股」とも書く。
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-参考資料-
・『DK漢字辞典』・公益財団法人日本漢字能力検定協会編、『漢検 漢字辞典 第二版』
・阿辻哲次、他、『角川 現代漢字語辞典』、2001年1月31日
・藤堂明保、他偏、『漢字源 改訂第六版』、2018年