「水」と、その下に「日」と書いて、「沓」という漢字があります。
あまり普段は使うことはありませんが、例えば「沓石」「雑沓」などで使われることもあります。
さて、この漢字「沓」はどのような意味を持つのでしょうか。
「沓」の部首
「沓」の部首は何だと思いますか。
上の「水」?それとも、下の「日」?
実は、「沓」の部首は、下の「日」に見える部分です。
「見える」と書いたのはなぜかというと、「沓」の部首は厳密には「日(ひへん・にちへん)」ではないからです。
分かりづらいかもしれませんが、下の部分は「曰(いわく・ひらび)」と呼ばれる部首です。「孔子曰く」の「曰」ですね。
「沓」の読み方 音読み・訓読み
「沓」の音読みは「トウ」です。
また、「沓」の訓読みは「くつ」、「かさ(なる)」、「むさぼ(る)」です。
「沓」の意味
「沓」は、「くつ」とか「はきもの」という意味です。
また、「かさなる」とか「こみあう」という意味もあります。
さらに、「沓」には「よくしゃべるさま」とか「おしゃべり」という意味もあります。
「沓石」とは 意味と読み方
「沓石」は、「くついし」と読みます。
「沓石」とは、柱を支える土台や基礎となる石のことです。
黒御影石の束石、沓石 上面6寸、高さ8寸
「沓手鳥」とは 意味と読み方
「沓手鳥」は、「ほととぎす」と読みます。
ホトトギス科の鳥のことですね。
とはいえ、「沓手鳥」と書かれることは稀で、「ホトトギス」「ほととぎす」とカタカナもしくはひらがな、または「不如帰」や「杜鵑」と書かれることが多い印象です。
「鳴かぬなら、殺してしまえホトトギス」「鳴かぬなら、鳴かせて見せようホトトギス」、「鳴かぬなら、鳴くまで待とうホトトギス」といった詩が有名です。それぞれ、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の性質をよく表しているとされています。
正岡子規とホトトギス
「ホトトギス」の漢字表記として、「沓手鳥」や「不如帰」などを上に述べましたが、これら以外に「子規」もホトトギスの漢字表記です。
この「子規」、見覚えありませんか。
そうです。俳人である「正岡子規」の名前なんです。それにしても、「子規」って珍しい名前だと思いませんか。
正岡子規の「子規」は、実は俳号と呼ばれるもので、本名は正岡常規(つねのり)です。
俳号とは、ペンネームみたいなものです。ちなみに、「俳号」が「俳名」となり、これが現代の「俳優名」につながっているそうです。
なぜ正岡子規は「子規」を俳号にしたのでしょうか。
正岡子規は、結核を患っていて、自分が喀血したときに、「鳴いて血を吐く」と言われていたホトトギスを自分に重ね合わせたようです。
自分が血を吐く姿をホトトギスに重ね合わせるなんて、かなり奇抜な発想ですね。
正岡子規は、この結核のために34歳という若さでこの世を去りました。
「雑沓」とは 意味と読み方
「雑沓」は「ざっとう」と読みます。
「雑沓」の意味は、「大勢の人で込み合うこと」とか「人込み(人混み」」という意味です。
「雑踏」と書かれることもあります。
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-参考資料-
・『DK漢字辞典』・公益財団法人日本漢字能力検定協会編、『漢検 漢字辞典 第二版』
・阿辻哲次、他、『角川 現代漢字語辞典』、2001年1月31日
・藤堂明保、他偏、『漢字源 改訂第六版』、2018年