
「異型輸血」とは、その名が示すように、「異なる型の血液が輸血される」ことを意味する。
滅多に起こることではないが、稀に発生し、患者などが死亡するなどしてニュースになることもある。
今回は、「異型輸血」について紹介しよう。
異型輸血とは
異なった血液型の血液を輸血することを「異型輸血」もしくは「ABO型不適合輸血」などと呼ぶ。
血液には、A型、B型、O型、AB型などがあるのは周知だが、これは「ABO式血液型」と呼ばれる血液の分類によるもので、数ある血液の分類の一つに過ぎない。
そして、異なる型の血液が混ざってしまうと、凝集や溶血が起こり、最悪の場合、死に至ることもある。
そのため、輸血をする場合には、血液型の判定が大切になるのである。
ちなみに、異型輸血が必ず死亡に繋がるわけではない。
「流れる臓器」血液の科学 血球たちの姿と働き (ブルーバックス)異型輸血が起こる原因
異型輸血は、血液型の判定や確認などのミスが原因で起こる可能性がある。
また、信じられないことだが、輸血用の血液に誤ったラベルが貼られたために起こることもあるらしい。
患者が複数いる場合には、人違いなどでも起こる可能性があるようだ。特に、大事故などで、緊急性のある状態で大勢の患者に輸血が必要な事態になると、リスクは高くなる。
異型輸血はO型が多い?高リスクの理由
異型輸血は、O型の血液型に起こる可能性が高いようだ。
上に述べたように、血液型は、大きくA型、B型、AB型、O型に分けられる。
そして、A型はA抗原、B型はB抗原を持ち、AB型はAとBの両方の抗原を持ち、O型は抗原を持たない。
簡単に言えば、A型はA型とO型の血液しか受け取れず、B型はB型とO型の血液しか受け取れないということだ。
AB型は、理論上、全ての型の血液を受け取ることができる。反面、O型はO型の血液しか受け付けない。
そのため、異型輸血によって被害を受ける可能性が高いのは、O型の血液型だという。
異型輸血の事例
最近ニュースになった異型輸血の事例では、山梨県立中央病院のケースがある。
山梨県立中央病院の事例
2017年7月1日、山梨県甲府市富士見にある山梨県立中央病院で、救急患者に間違った血液型の輸血を行う医療事故が起こり、患者が死亡したことが分かった。
患者は60代の男性で、交通事故で搬送された直後、心肺停止状態となり、蘇生処置を受けていた。その過程で、異なる血液型の血液が誤って輸血されてしまったようだ。
救急の現場は、時間的に余裕が無く、人手が足りない場合もあるので、異型輸血が起こってしまう可能性は少ないながらもあるようだ。
今回のケースでは、男性患者が心肺停止状態となり、かなり緊急性が高かったと思われる。現場ではギリギリの対応が求められていたことが想像できる。
山梨県立中央病院は、事故の詳細について、1日夜に記者会見を行い、詳細が説明された。
男性は、6月23日早朝に救命救急センターに搬送され、心肺停止の状態で5680ミリリットルの輸血を受けた。
しかし、本来がO型の血液を輸血しなければならなかったのに、B型の血液が840ミリリットル混入していたことが、手術直後の確認作業で分かったようだ。
なお、輸血ミスと死亡との因果関係については、病院側は「死因は交通事故による大量失血」と判断している。
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-参考資料-
・『山梨県立中央病院で異型輸血 救急の男性患者が死亡』、産経ニュース、2017年7月1日、http://www.sankei.com/affairs/news/170701/afr1707010022-n1.html・『交通事故で輸血ミス後、男性死亡 O型にB型混入 山梨』、朝日新聞デジタル、2017年7月1日、http://www.asahi.com/articles/ASK716JVKK71UZOB00P.html