
金偏(かねへん)に「寿(ことぶき)」と書いて「鋳(ちゅう・いる)」と読むこの漢字、実は日常生活や工業用語でもよく使われる重要な言葉です。
本記事では、「鋳」の読み方や意味、鋳物・鋳型・鋳造などの使い方まで、分かりやすく解説します。
「鋳物」は、みなさんの身の回りでも使われており、生活に密着した言葉であるともいえます。ぜひ知っておきたいですね。
「鋳」の読み方 音読みと訓読み
「鋳」は、音読みで「チュウ」と読みます。
また、訓読みでは「い(る)」と読みます。
音読み・訓読みとも、なかなか字面からは分かりづらい読みですので、注意が必要ですね。
「鋳」の意味|金属を溶かして形を作る
「鋳(いる)」という漢字は、金属を溶かして型に流し込み、器や道具を作るという意味を持ちます。
たとえば、鋳型(いがた)と呼ばれる型に溶けた金属を注ぎ込んで、鍋や仏像、貨幣などを成形する行為を「鋳る」と言います。
この「鋳る」は、日本語で使われるさまざまな「いる」という言葉の一つで、金属加工に特化した意味を持つのが特徴です。
ところで、「いる」と読む他の漢字には、「炒る」や「煎る」などもありますね。
同じ読み方でも、意味や使い方は大きく異なります。
次は、それらとの違いについて見ていきましょう。
「鋳る」と「炒る」・「煎る」との違い
「鋳る(いる)」という言葉と同じ読み方には、「炒る」や「煎る」といった漢字もあります。
どれも「いる」と読みますが、それぞれ意味や使い方がまったく異なるため、混同しないよう注意が必要です。
まず「鋳る」は、金属を溶かして型に流し込むという、工業や製造に関わる作業を表します。
これに対して「炒る」「煎る」は、どちらも加熱調理に関連する表現です。
- 「炒る」は、ゴマや豆を油を使わずにフライパンなどで乾煎りする調理法です。
- 「煎る」は、茶葉や薬草などをじっくり熱して成分を引き出す調理・加工の場面でよく使われます。
つまり、「鋳る」はものづくりの現場で使われる技術用語であり、「炒る」や「煎る」は料理など日常生活に密着した行為なのです。
同じ読み方でも、まったく異なる意味を持つため、文脈に応じた正しい使い分けが求められます。
ちなみに、「煎る」で使われる漢字「煎」については、以下の記事で詳しく解説しています:
⇒「煎(前にれっか、前の下に点々)」という漢字は何?読み方・意味・使い方 「煎る」「煎茶」「煎餅」「煎薬」など
それでは「鋳」を使った言葉を見ていきましょう。
「鋳」を使った熟語と表現
「鋳」という漢字は、単独で使われるよりも、熟語の中で見かけることの方が多いかもしれません。特に、「鋳型」「鋳物」「鋳造」などは、金属加工やものづくりの現場に関わる言葉として日常でも目にする機会があります。
このセクションでは、それぞれの熟語の意味や使い方、そして比喩表現としての「鋳型にはめる」といった慣用句まで、幅広くご紹介します。「鋳」という漢字のイメージがぐっと深まるはずです。
「鋳型」とは? 読み方と意味
「鋳型」は「いがた」と読みます(※「ちゅうがた」とは読まないので注意しましょう)。
この言葉は、「溶かした金属を流し込んで形をつくるための“型”」を意味します。たとえば鉄や銅などを高温で溶かし、その液体を鋳型に注いで冷やすことで、スプーンや仏像、機械部品など、さまざまな製品がつくられます。
つまり鋳型は、ものづくりの“原型”を決める重要な道具ともいえるのです。
この鋳型という言葉は、単に金属加工の用語としてだけでなく、比喩的にもよく使われます。それが次に紹介する「鋳型にはめる」という表現です。
「鋳型にはめる」とは? 比喩表現としての意味
「鋳型にはめる」とは、元々は金属を鋳型に流し込んで、決まった形に固める工程を指します。
しかしこの表現は、比喩的に「個性や自由を奪って、画一的に育てる・型にはめる」という意味でも使われます。
たとえば、「鋳型にはめるような教育」といえば、誰もが同じ価値観や考え方を持つように仕向ける、画一的で柔軟性に欠ける教育を批判的に表す言い方です。
戦後日本では、アメリカ型の成功モデルを模倣することが重視され、「鋳型にはめる」ような教育スタイルが主流でした。
しかし近年では、AIの台頭や社会の多様化により、一律の型では通用しない時代が訪れています。そうした背景から、「鋳型から抜け出す教育」が注目を集めるようになりました。
こういった状況の中、日本の教育も現在では少しずつ変わってきているようですね。
・麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること
教育に関する記事は、以下にまとめております。
⇒「教育に関する記事」
脱・鋳型の教育 ―「STEAM教育」とは?
かつての日本では、「鋳型にはめる」ような教育が一定の成果を上げてきました。
しかし今、社会は大きく変わりつつあります。AI技術の進化やグローバル化により、「型にはまった人材」では通用しない時代がやってきているのです。
そこで注目されているのが、「STEAM教育」と呼ばれる新しい学びのスタイルです。
STEAM教育とは、
- Science(科学)
- Technology(技術)
- Engineering(工学)
- Arts(芸術)
- Mathematics(数学)
の5つの分野を横断的に学び、論理的思考と創造力の両方を育む教育のことを指します。
文部科学省もこの方針を推進しており、「教科を越えた学び」や「探究的な学習」が学校現場でも徐々に導入され始めています。
こうした教育の背景には、もはや“鋳型”にはまった知識だけでは生き抜けない社会になっているという危機感があります。
これからの時代に求められるのは、「鋳型をつくる側」や「型を超えて発想する力」なのかもしれません。
・話題のSTEAM・プログラミング教育教材なら【ワンダーボックス】 ![]()
「鋳物」とは 読み方と意味
「鋳物(いもの)」とは、溶かした金属を型に流し込み、冷やし固めて作った製品のことを指します。
日常生活の中でも、鍋や仏具、マンホールのふたなど、さまざまな場面で目にすることができます。
「鋳型」で作る代表的なもののひとつであり、「鋳」という漢字が実際にどのように使われているかを知るうえでも重要な言葉です。
例えば、フランス製の有名な鍋「staub ストウブ(⇒https://amzn.to/3SUoEl1)」も鋳物ですね。
重厚感のある鍋で、私も愛用しています。それなりの値段がしますが、一生ものだと思えば安いですね。
「鋳物」に対する「打物」との違い
「鋳物」は、金属を一度溶かしてから型に流し込んで固めるという工程で作られます。これに対して「打物(うちもの)」は、熱した金属を打ち延ばしたり、叩いて形を整える方法で作られます。
たとえば――
- 「鋳物」の代表例は、鋳鉄製の鍋(例:ストウブや南部鉄器)や仏像、マンホールのふたなど。
- 一方「打物」は、刀剣や鍬(くわ)などの農具、鍛造ハンマーなどの工具がその例です。
このように、製造工程と用途の違いから、「鋳物」と「打物」は技術的にも意味的にも対義語の関係にあるといえます。
「鋳」の意味を正確に理解するうえで、「鋳物」と「打物」の違いを知っておくことはとても重要です。
「鋳造」とは 読み方と意味
「鋳造(ちゅうぞう)」とは、金属を溶かして型に流し込み、製品や部品を作る工程のことです。
「鋳造する」「鋳造された」といった使われ方をすることが多く、産業分野や工業製品の説明では頻出の専門用語でもあります。
また、同じ意味で「鋳金(ちゅうきん)」という語もあり、こちらは美術的な鋳造(ブロンズ像など)に使われることもあります。
「鋳造」に関しては、以下の記事で詳しく説明しております。
「鋳造」と「鍛造」の違いとは?
「鋳造」と似た言葉に「鍛造(たんぞう)」がありますが、これらは製造方法がまったく異なります。
- 鋳造:金属を溶かして型に流し込む方法(自由度が高く複雑な形状も可能)
- 鍛造:金属を叩いて形を整える方法(強度が高く耐久性に優れる)
この違いにより、鋳造品は形状が複雑な部品や芸術品などに、鍛造品は強度が求められる部品(クランクシャフトなど)に向いています。
両者の違いをさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
⇒「鍛(金へんに段、金段)」という漢字は何?読み方・意味・使い方 「鍛造」「鍛冶」「鍛錬」など 「鍛造」と「鋳造」の違いとは
「鋳山煮海」とは 読み方と意味
四字熟語で「鋳山煮海」というものもあります。「ちゅうさんしゃかい」もしくは「ちゅうざんしゃかい」と読みます。
大量の財貨を蓄えることや、山海の資源や産物などが豊富であることのたとえで使われます。
「鋳山」は山の銅を採掘し、それを溶かして貨幣を作ることを意味し、「煮海」は海水を煮て塩を得るという意味です。
出典は『史記』です。
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-参考資料-
・『DK漢字辞典』・公益財団法人日本漢字能力検定協会編、『漢検 漢字辞典 第二版』
・阿辻哲次、他、『角川 現代漢字語辞典』、2001年1月31日
・藤堂明保、他偏、『漢字源 改訂第六版』、2018年
