金偏(かねへん)に「寿(ことぶき)」の文字をくっつけると「鋳」という漢字になります。
この「鋳」という漢字の読み方や意味を知っていますか。「鋳物」や「鋳型」、「鋳造」という言葉で使われることが多いですね。
「鋳物」は、みなさんの身の回りでも使われており、生活に密着した言葉であるともいえます。ぜひ知っておきたいですね。
「鋳」の読み方 音読みと訓読み
「鋳」は、音読みで「チュウ」と読みます。
また、訓読みでは「い(る)」と読みます。
音読み・訓読みとも、なかなか字面からは分かりづらい読みですので、注意が必要ですね。
「鋳」の意味
金属を溶かして型に流し込むことを「いる」といいます。「鋳」はその「いる(鋳る)」という意味で使われます。
器物や貨幣などは、溶けた金属を鋳型(いがた)に流し込むことで作られます。そういった作業のことを「鋳る」と呼ぶわけです。
日本語の「いる」という言葉は色んな意味合いで使われ、「鋳る」という意味のほか、「居る」や「炒る」・「煎る」などにも使われます。
さて、「鋳る」と「炒る」・「煎る」の違いが分かりますか?
「鋳る」と「炒る」・「煎る」との違い
「炒る」や「煎る」は、料理で使われる「いる」に使われます。「炒る」や「煎る」は、「材料に火をかける」という意味を持つのです。
なお、「煎」という漢字については、今回のトピックとはずれるので、以下の記事で詳しく説明します。是非ご一読を。
⇒「煎(前にれっか、前の下に点々)」という漢字は何?読み方・意味・使い方 「煎る」「煎茶」「煎餅」「煎薬」など
それでは「鋳」を使った言葉を見ていきましょう。
「鋳型」とは 読み方と意味
「鋳型」は「いがた」と読みます。「ちゅうがた」ではありませんので注意しましょう。
金属を鋳る際に使われる型のことです。
鋳型に、溶かした金属を流し込んで、後述の「鋳物」を作るわけです。
「鋳型にはめる」の意味
「鋳型」を使った表現に「鋳型にはめる」という慣用句があります。
鋳型に液状の金属を流し込んで器物などを作るように、「画一的な教育で個性のない人間に育てる」といった意味です。
戦後の大量生産・消費社会ではこういった教育が盛んでした。
当時は、アメリカなどの先進国のロールモデルが存在しましたので、先進国のやり方を「鋳型」にしてその型にはまるような人間を育てていけば、それなりの経済的成長を遂げることができたのです。
しかし、曲がりなりにも先進国の仲間入りを果たした日本では、かつてのアメリカのようなお手本とすべきモデルがありません。
また、AI技術の進歩によって、鋳型にはまった人間が活躍できる分野も狭くなっています。AIが得意とするのは、いわば「鋳型にはまった作業」だからです。
つまり、これまでのような「鋳型にはめる」ような教育では行き詰まってしまうのです。
こういった状況の中、日本の教育も現在では少しずつ変わってきているようですね。
・麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること
教育に関する記事は、以下にまとめております。
⇒「教育に関する記事」
STEAM教育とは
脱「鋳型にはまった教育」を目指して、最近「STEAM教育」という言葉が提唱されています。
文部科学省のウェブサイトでも、「STEAM教育」により「教科等横断的な学習の推進」を目指す旨の記述があります。
以下のようなSTEAM教育のサービスもありますね。
・話題のSTEAM・プログラミング教育教材なら【ワンダーボックス】
「鋳物」とは 読み方と意味
「鋳物」は「いもの」と読みます。「ちゅうぶつ」ではありません。
上述した「鋳型」に、溶かした金属を流し込んで作ったものや器物のことです。
例えば、フランス製の有名な鍋「staub ストウブ(⇒https://amzn.to/3SUoEl1)」も鋳物ですね。
重厚感のある鍋で、私も愛用しています。それなりの値段がしますが、一生ものだと思えば安いですね。
なお、「鋳物」に対し、打って鍛えたり延ばしたりして作ったものや器物のことを「打物(打ち物)」といいます。「鋳物」と「打物」は対義語の関係にあります。
「打物」の例としては、例えば刀や槍といったものが挙げられます。
「鋳造」とは 読み方と意味
「鋳造」は「ちゅうぞう」と読みます。
鋳型に金属を流し込んでものや器物を作ることを指します。「鋳造する」と「鋳る」はほぼ同じ意味で使われます。
私の感覚では、「鋳」という漢字はこの「鋳造」という用語で使われることが多いです。
また、「鋳造」と同義語で「鋳金(ちゅうきん)」という言葉も使われます。
「鋳造」に関しては、以下の記事で詳しく説明しております。
「鋳造」と「鍛造」の違い
「鋳造」と似たような漢字の言葉に「鍛造」があります。
これら「鋳造」と「鍛造」の違いが分かりますか。
もし確信が持てないようでしたら、是非以下の記事で確かめておいてください。
⇒「鍛(金へんに段、金段)」という漢字は何?読み方・意味・使い方 「鍛造」「鍛冶」「鍛錬」など 「鍛造」と「鋳造」の違いとは
「鋳山煮海」とは 読み方と意味
四字熟語で「鋳山煮海」というものもあります。「ちゅうさんしゃかい」もしくは「ちゅうざんしゃかい」と読みます。
大量の財貨を蓄えることや、山海の資源や産物などが豊富であることのたとえで使われます。
「鋳山」は山の銅を採掘し、それを溶かして貨幣を作ることを意味し、「煮海」は海水を煮て塩を得るという意味です。
出典は『史記』です。
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-参考資料-
・『DK漢字辞典』・公益財団法人日本漢字能力検定協会編、『漢検 漢字辞典 第二版』
・阿辻哲次、他、『角川 現代漢字語辞典』、2001年1月31日
・藤堂明保、他偏、『漢字源 改訂第六版』、2018年