「表記」と「標記」は、いずれも「ヒョウキ」と読みますが、意味は若干異なります。
この違いについては、知らない人も多いのではないでしょうか。
今回は、「表記」と「標記」の意味と違いについて学びます。
「表記」の意味
「表記」には、以下のような意味があります。
①表面やおもてに書き記すこと。また、その書き記されたもの。表書き。
②文字や記号を使って書き表すこと。
「表記」の使用例としては、「表記の住所」や「ローマ字表記」などがあります。
「標記」の意味
「標記」には、以下のような意味があります。
①符号などの目印をつけること。また、その符号や文字など。
②標題を書き記すこと。見出しなどをつけること。また、その書き記された事柄。
「標記」の使用例としては、「標記の会議」などがあります。
「表記」と「標記」の違い
上に述べた意味を鑑みると、「表記」と「標記」のどちらも、「文字や記号、符号を使って書き表す」という点においては共通しています。
ただ、「表記」の場合、①の意味で触れられているように、「表書き」という意味があります。「表書き」とは、はがき、封書・小包、文書などの表に、住所や氏名などを書くことです。
これに対し、「標記」の場合、②の意味でも言及されているように、「標題を書き記すこと」、という意味があります。「標題」というのは、つまり「タイトル」のことです。メールなどでは「件名」でしょうか。
つまり、短く言えば、「表記」というのは「住所や文章などを書き記すこと、もしくは書かれた文字や文章そのものの意味」を指すのに対し、「標記」というのは「ある事柄を示す符号やタイトルなどの文字」という風に覚えればよいと思います。
ですから、「はがきに表記の住所」という言い方はありますが、「はがきに標記の住所」という言い方はしません。また、「標記の会議を開催します」と言いますが、「表記の会議を開催します」とは言いませんよね。
他には、「表記」というのは、書かれた言語や文字に関係することも触れておきます。
例えば、「ローマ字表記」や「英語表記」、「ひらがな表記」や「カタカナ表記」があります。いずれの場合でも、「表記」の代わりに「標記」を使うようなことはしません。
契約書における「表記」と「標記」
契約書においては「表記」と「標記」の両方が使われることがありますが、それぞれについて明確な違いがなされていない、というのが実情のようです。
例えば、「表記契約」という場合もあれば「標記契約」という場合もありますし、「表記物件」という場合もあれば「標記物件」と書くような事例もあります。
契約書で、なぜ「表記」や「標記」という表現を使うのか、というと、いちいち議題に上がっている事柄を重複して書くことを避けるためです。
例えば、「どこどこにある物件」に関する契約である場合に、「どこどこにある物件」を何度も書くよりも、「標記物件」と書く方が、書く方も読む側もすっきりして分かりやすいからです。なお、「以下、標記物件を「本物件」とする」などという文言を付け加えることもあります。この文言を付け加えることにより、
「どこどこにある物件」=「標記物件」=「本物件」
という認識ができるわけです。
ただ、この場合、「表記」または「標記」と書かれた事柄について、書き手と読み手の側で認識がちゃんと一致していることが重要です。
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-参考資料-
・『DK漢字辞典』・公益財団法人日本漢字能力検定協会編、『漢検 漢字辞典 第二版』
・阿辻哲次、他、『角川 現代漢字語辞典』、2001年1月31日
・藤堂明保、他偏、『漢字源 改訂第六版』、2018年