四字熟語に「孟母三遷(もうぼさんせん)」というものがある。
この「孟母三遷」は、「孟母三遷の教え」とも言う。私はこの教えを地で行ったので、その意味が良く分かる。
さて、この「孟母三遷」の意味をご存じだろうか。
「孟母三遷」の意味
「孟母三遷」は、簡単に言うと「子供の教育には環境が大切」という教えのことだ。
子供を持つ親としては、同じような意見を持つ人が多いのではないだろうか。
「孟母三遷」の由来・出典
「孟母三遷」は、中国の戦国時代の思想家で著名な孟子の母親の故事からきている。
故事の出典は、『列女伝』の「鄒孟軻母」。また、『蒙求』の「一三四 軻親断機」にも掲載されている。
孟子といえば、性善説で有名な中国の思想家・哲学者だ。「孟母三遷」は、この偉人を育てた母親の話が基礎となっている。
「孟母三遷」のうち、「孟母」は「孟子の母」という意味。また、「三遷」は「三度引っ越しする」という意味だ。
故事の内容は以下の通り。
孟子は、幼い頃に父親を亡くし、母親と2人で暮らしていたという。
孟子の母は、最初は墓地のそばに住んでいたが、幼き頃の孟子が葬式のマネをして遊ぶのを見て、自分の子供の教育に悪い影響があると考え、市場のそばへ引っ越した。
しかし、市場のそばでは、今度は孟子が商人のマネをして遊ぶようになった。そこで、孟子の母は、今度は市場のそばから、学校のそばへと住居を移した。
そして、学校のそばでは、孟子は礼儀を覚えるようになったので、孟子の母は安心してその場に住み着くようになったという。
なお、この故事では、引っ越しは2回しかしていないことになる。どういうことか。
「三遷」というのは、場所の数として数えているのかもしれない。また、「度々」という意味合いで「三」を使っている可能性もある。
個人的な感覚では、中国では、「三」という数字が好まれるフシがあるので、それが影響しているのかもしれない(例えば「三顧の礼」など)。
「孟母三遷」の原文(漢文)
「孟母三遷」の出典のうち、『蒙求』の「一三四 軻親断機」に掲載された原文を紹介しよう。
古列女傳、鄒孟軻母、其舍近墓。孟子少嬉遊、爲墓閒之事。孟母曰、此非吾所以居處子也。乃去、舍市傍。其嬉戲乃賈人衒賣之事。又曰、此非吾所以居處子也。復徙舍學官之旁。其嬉戲乃設爼豆、揖讓進退。孟母曰、眞可以居吾子矣。遂居。
『Web漢文大系』https://kanbun.info/koji/mobosansen.htmlより引用
「孟母三遷」の類義語
「孟母三遷」と似たような意味の四字熟語として、「慈母三遷」や「孟母三居」がある。